2004年04月23日
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新現実 Vol.3 角川書店 (村山紀、香山リカ対談の感想のみ)

Written By: 川俣 晶連絡先

 この本は、予想の数倍の面白さを持っていることに気付かされました。

 万人が面白いと思うかは分かりませんが、少なくとも私には非常に面白い本であるようです。

 特に、話題が多方面にわたりながら、それでいて、私が読んで面白いベクトルと適合している意外感と不思議感がありますね。

村山紀と大塚英司の対談 §

 村山紀という名前は知らなかったので、何を扱った対談か分からずに読み始めましたが、ズドンと私の興味領域の真ん中に落ちてきた感じでびっくりしました。

 この対談は民俗学についての内容で、その直前に宮台真司との対談とは大きく内容が異なります。ここでは、柳田国男が戦時下に国策に荷担していたのではないか、という話題が扱われていて、それを正面から取り上げない民俗学の現状への批判があるように思います。そのあたりは、私には分からない世界です。私自身は、特に民俗学が興味の対象ではないからです。

 しかし、柳田国男の本が部屋に1冊ぐらいはあったりするのも確かですし、この対談で出てくる京極夏彦であるとか、網野善彦の本はけっこう読みます。この二人は、通常接点のない異なる世界の作家と歴史学者だと思いますが、私が個人的に高く評価する名前です。それが、1つの対談の中で、両方が出てくるというのは、なかなかの意外性です。

 そういう意味で、この領域は私が興味を持っている領域達に囲まれた部分に存在する領域であり、いろいろな点で問題意識が共有される点があるのだろうと思います。

 そのためか、書かれたことが全て理解できたとは到底言えないものの、とても面白く読めました。未知の世界を新鮮にかいま見た感じです。

 また、大塚英司という人が、柳田系の民俗学研究者を師としていたという話も、とても興味深いと思います。そういうバックグラウンドから、並はずれた「漫画ぶりっこ」のような雑誌を生み出せたとすれば、それは1つの納得のいく解釈です。

 特に面白かったのは、「民俗学は擬史」という言葉ですね。それを柳田の弟子だった大塚英司の先生が言ったと言うのが、これまた興味深いことです。これは、現時点では面白さを感じているだけですが、いずれ機会があれば、じっくり吟味してみたいテーゼです。

香山リカと大塚英司の対談 §

 こちらの方は、あまり印象に残ることがありません。しかし、さらっと読めてしまったことが、逆説的に凄いことのような気がします。

 1つ、読みながら自分のことを思い起こさせられたのは、以下のところです。

香山 つまり、歴史は反復するものとか、過去のあやまちは繰り返すな、といった連続性の視点がない。さっきの精神科の話もまさにそうでしょう。私宅監置の時代から延々と苦労してやっとここまで開放化が進んだところなのに、なぜ一発逆転で観察法案なんていう法律ができるのか、理解できない。

 これは前から私がデジタルデータのコピー問題に対して不満に思っていることと、重なるように感じられました。

 つまり、自由なコピーを許す思想と、それがもたらす問題点というのは、実は何ら新しいことではなく、過去の出来事の繰り返しに過ぎないということです。しかし、この業界も過去から学ぼうとか、過ちを繰り返さないようにしよう、という熱意が乏しいようで、いともあっさりと同じ問題を繰り返していますね。

 この話題は、チャンスかリクエストがあれば、もっと詳しく書きます。

まだ読み終わっていないけれど §

 まだ読み終わっていませんが、1つ思うことがあります。

 ずっと、美少女系エッチ漫画雑誌がつまらなくなったことに不満がありました。たとえば、大塚英司が創刊した。「漫画ぶりっこ」というのは、美少女さえ出せば何をしても良いという免罪符を得て、通常の流れからはドロップアウトした異能的才能を世に出すような機能性を持っていたように感じます。しかし、最近の美少女系エッチ漫画雑誌は、コンビニなどで眺めてみて、極めて限定された範囲の漫画しか載せないか、あるいは、単にエッチという点で過激になっているだけでしかないものばかり、という印象があります。そういう中で、「漫画ぶりっこ」のような雑誌がまた読みたいものだな、と思っていました。それが、この新現実で叶えられたような気がします。実際には漫画雑誌ではなく、小難しい言葉がびっしりと並んでいる分厚い本ではありますが、そこから感じ取るワクワク感はどこか相通じるものがあるような気がします。

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