完成度の高い兵器は、完成した時点で最強であったとしても、その後で、状況の変化に対応して進化することができないことが珍しくありません。たとえば、零戦がその典型例の一つといえるでしょう。極限まで切りつめられた設計によって得られる高度な空戦性能は、世界的にも優れたものであったと言えます。しかし、状況の変化に対応してエンジンや武装を変化させていく柔軟性は高くはなかったと言えます。たとえば、性能向上のために翼端を短くした32型は、代償として航続距離が短くなってしまったため、実戦では使いにくかったという話があります。
ガンダム世界で、量産され活躍していながら発展するための余地が少なく、短命に終わったモビルスーツは何でしょうか? ドムがそれにあたるのではないかと考えてみました。ドムは、モビルスーツの弱点である地上での移動力を改善するためにホバー走行という画期的な技術を導入していました。これにより、地上においては特筆すべき高い機動力を発揮することができ、機動力に劣る連邦の地上軍に大きなプレッシャーを与えたと言えます。しかし、重く巨大な機体を地上から浮かせ、自由自在に移動させることは、技術的に容易なことではありません。既存の汎用機体を少し改良したぐらいでは達成できず、ホバー走行をするために機体の形を決めていく必要があったと考えられます。当然、ホバー走行が円滑に可能となる形状や重量バランスの範囲は、二足歩行に比べて極めて狭いものだと予想されます。つまり、ドムは、そう簡単に形や装備を変更できるものではなく、状況が変化したり新型装備が登場しても、容易にそれに対応することができなかったと考えられるわけです。
とはいえ、ドムには、リックドムという宇宙用の派生型が存在します。地上用のMSを宇宙用に短期間で変更できたことは、発展する余地があったと言えないでしょうか?
リックドムは、ホバー走行のための大出力が宇宙に於いては、大加速を実現するパワーとなり、ザクでは力不足の状況をカバーするために利用可能であったと考えられます。大きな加速力があれば、それを活かした一撃離脱戦法も可能となります。しかし、一撃離脱戦法がジオン軍に向いているかというと、話は別です。というのは、数において劣るジオン軍は、ミノフスキー粒子を散布して火砲を封じた後に、近接格闘戦で各個撃破する作戦が基本にあるわけで、一撃離脱向きの重モビルスーツよりも、近接格闘能力に優れたモビルスーツの方が適していると考えられるからです。
それを考えれば、リックドムは、加速能力をある程度減らしても、近接格闘能力を高めることが必要とされたと考えられますが、実際にはそのような発展形は開発できず、純粋なザクの後継機としてはゲルググがその座を占めることになってしまったわけです。つまり、ドム系モビルスーツは、完成度が高すぎるゆえに発展の余地が乏しく、長期間主役を勤めることができなかったと考えられます。
それと比較すれば、発展する余裕が最初から与えられたGMの優位性は明らかと言えるでしょう。状況に応じて様々な派生型が生まれ、それらは極めて長い期間、現役であり続けたわけです。
と～のは、そんなドムすら取り上げられてしまった悲劇のランバラルを応援しています。
ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と～のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と～のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。
