正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
RX-75は、あの有名なホワイトベース隊に所属していたため、かなり名の知れたモビルスーツということができます。しかし、その評価は低い。あまりにも低い。これはモビルスーツではないと言い切られ、勘違いの結果生まれた欠陥品とまで言われています。公式記録からして、RX-75に対して非常に否定的なスタンスを取っております。更に、ホワイトベースが第13独立部隊として宇宙で活動した際、RX-75が搭載されていたにも関わらず記録映画ではRX-77が2機搭載されていたかのように改ざんされ公開されたという事実すらあるのです。
しかし、ホワイトベース隊の記録を見れば一目瞭然ではありますが、RX-75の上げた戦果はけして小さなものではありません。もちろん、伝説的なRX-78ガンダムの活躍には劣りますが、RX-75に搭乗したハヤト・コバヤシがエースパイロットの称号を手にしたこともまた事実と言うことができます。つまり、RX-75はジオンのモビルスーツに対抗する有効な戦力として数えられた存在であったと言えるわけです。
RX-75が近接格闘戦に不向きな形状であるのは事実ですが、宇宙空間では数キロ先の敵機を目視できることも珍しくありません。見張りさえ怠らなければ、ザクのヒートホークの間合いに入る前に敵を撃破することが可能でした。また、距離2～3キロメートルでザクの正面装甲を打ち抜けるだけの貫通力のある主砲を備えていたことも事実なのです。
では、このRX-75への言われなき蔑視はいったいどこから来ているのでしょうか。
その理由は連邦軍のMS開発プロジェクトの組織を調べると見えてきます。RX-75の設計の担い手は、従来の兵器設計局であるのに対して、それ以後のMSはV作戦計画本部が担当しています。同じRXナンバーが与えられているからといって、けして同じ組織で設計されたわけではないのです。
RX-75の母胎は、もともと月面侵攻戦車として極秘に開発されていたTX-75という戦車にあるらしいことが、一部の資料から知ることができます。このあたりは、様々な欺瞞工作の結果、相矛盾する様々な資料が残っていて公式記録も混乱を来していますが、公式記録の記述は矛盾に満ちており、信用はできません。
さて、TX-75は月に大きな影響力を持ち始めたジオンに対して軍事的に月を確保することを目的に開発が始まったものです。しかし、真空での活動を想定したり、月面へ自力で降下するためのスラスターを装備したりしたため、極端に巨大化が進み、とても地球上で戦車として運用できる兵器には成りようがなかったのです。そのことは、RX-75が地球上の道路を走行できるか考えてみれば推測できることでしょう。
さて、TX-75が試作段階のうちに1年戦争が始まり、ザクショックが連邦軍を襲いました。劣勢を挽回するには、ザクに対抗できる兵器を早急に用意しなければなりません。ザクが宇宙戦闘機に勝るのはAMBAC機動、火力、装甲の3ポイントであると連邦軍では考えられていました。宇宙戦闘機に付け焼き刃の改良を施しても対抗できないのは明らかです。ですが、少なくとも火力と装甲でザクに対抗しうる兵器が1つだけあったのです。それがTX-75です。ではTX-75に、AMBAC機動用の多関節アームを取り付けたら、何とかザクに対抗できるのではないか。そのアイデアは急ピッチで図面にまとめられ、ここにRX-75の原型が完成したのです。コアブロックの採用以外は、ほとんど最終形に近いものが描かれていました。
このまま、その図面を製造していたら、もしかしたら1年戦争は半年戦争になっていたかもしれません。ですが、敵は身内にいたのです。
その当時、新設されたばかりのV計画本部は、ザクに対抗するモビルスーツをゼロから新規に開発するための組織でした。もし、ザクに対抗できる兵器が、既存兵器の改良程度で作られてしまっては、V計画推進派の立場はなくなってしまいます。
そこで、RX-75は、モビルスーツを理解しない旧弊な技術者が作った出来損ないであるという根も葉もない噂を軍上層部や政治家達にせっせと流すという、まるで味方に弓を引く行為が横行したのです。現在のRX-75蔑視の風潮は、この当時の噂が後々まで尾を引いたものと言えるでしょう。
しかし、これが事実ではないことは、ハヤト・コバヤシが残した輝かしい戦果が証明しているのです。
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