正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
宇宙世紀0079某月某日。連邦軍北部航空軍本部に待望の新型戦闘機が到着しました。
なにせ、連邦軍の戦闘機乗りは、ジオンのドップに煮え湯を飲まされて続けていたのです。視界が広く小回りの利くドップは、格闘戦に入ると、速度重視のTINコッドでは到底太刀打ちができなかったのです。
だからこそ、ドップと正面から格闘戦のできる小型戦闘機は、連邦軍戦闘機乗りが待ちに待ったものでした。
しかし、到着した新型はまるでセイバーフィッシュを小型化したかのようなデザインであり、お世辞にも視界が広いとは言えませんでした。それでも、小回りが利けば使いようがある。そう思った戦闘機乗り達は、すぐに捕獲したドップを格納庫から引き出し、模擬戦を始めたのです。
2機の機体が、互いに相手に後ろに付こうとくるくると周ります。
と、そのとき、誰もが予想しなかったことが起こったのです。新型が、機体中央から折れ曲がったのです。
幸いパイロットは脱出に成功したものの、機体は墜落。パイロット達が付けたあだ名は「カックン」。
更に、機体内部に収納したミサイルが、エンジンの過熱で爆発する事故が起こるに至って、パイロット達はあからさまに、新型を避けるようになりました。
とはいえ、これがFF-X7コアファイターの最初の問題というわけではなく、最後の問題というわけでもなかったのです。
コアファイターが生まれるきっかけからして、ろくでもないものでした。ドップにしてやられた現場パイロットからの要望からスタートした軽戦闘機開発プロジェクトと、V作戦の一部として開発が開始されたコアブロック。この2つの機体が、ほとんど同程度の大きさ、同じエンジン出力であることに気付いた現場を知らない偉い人がいたのです。偉い人は、この全く目的の異なるプロジェクトを統合すれば、より効率よく開発が進むと考えたのです。その結果生まれた機体がコアファイターというわけです。
結局、コアブロックのサイズの制約から、コアファイターにはドップ並みの広い視界を与えることはできず、コアブロックとしては不必要なほどに強力な空戦性能と武装を与えられ、無意味にコストアップしてしまいました。どちらの立場から見ても、中途半端で使いにくいものになってしまったのです。
それでも使命感に燃える技術者達は必死で機体を改修し、コアファイターを少しでも使い物になるように努力しました。その結果、機体の変形機構には強力なロック装置が追加され、ミサイルベイとエンジン間の断熱も強化されました。その改修済みの機体がホワイトベースに優先的にまわされたため、伝説のホワイトベース隊はコアファイター絡みのトラブルに巻き込まれることは回避されたのです。
ですが、一度染み着いた悪評は簡単には消えず、軽戦闘機としてコアファイターの配属を希望する飛行隊はなく、また量産型MS(後のGM)の開発計画でも採用は見送られました。
その後、コアファイターを発展させた機体の開発計画は全て破棄され、コアファイターの後継機種なるものが生まれることはありませんでした。ただし、コアファイターの名を冠した別設計の機体は存在します。
そのような訳で、コアファイターに大型の機体を接続して対地攻撃機とするコアブースターも、机上プランのまま立ち消えとなったのです。しかし、Gファイターの存在を秘匿したい連邦軍情報部が、あたかもGファイターではなくコアブースターが実在するかのような情報を流した結果、現在でもコアブースターを実際にホワイトベース隊でテストされた機体とする資料が多くあります。ホワイトベース隊の記録映画では、記録ビデオに映っているGファイターを消して、画像合成でコアブースターを入れたという事例まであるほどです。しかし、あれほどの悪評の立った機体の強化装備を時間とコストを掛けて開発することは常識的にはあり得ず、やはりコアブースターは架空の機体であると考えるのが妥当なところでしょう。
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