2002年03月13日
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宇宙世紀の駄ッ作機 MS-07グフ

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 地球上に降下したジオン軍は、当初MS-06ザクを主力兵器として地球上を戦い抜きました。しかし、これはモビルスーツが地上で最強の兵器だとジオン軍が考えていたわけではなく、それしか無かったからやむを得ず使ったまでのことでありました。もちろん、地球連邦艦隊に壊滅的な打撃を与えた後なので、モビルスーツが余ってしまったという事情もあります。

 そのような訳で、大気圏内での戦闘用に新規に設計された新兵器群が将来のジオン地上軍の主力になることは、その時点でのジオン軍関係者のいわば常識なのでした。

 とはいえ、新兵器群がアッという間に開発できるわけもなく、つなぎとして、宇宙用装備を外して地上向けにチューンしたMS-06Jのようなザクの派生型を開発したわけです。しかし、MS-06Jを担当した技術者達は、まだ改良の余地があることに気付いていた。MS-06Jは、もともと宇宙用の兵器を、主要部品に互換性を持たせながら地上用に設計変更したものです。しかし、部品の互換性を忘れることができれば、もっと高性能化できるのは明らかでした。もちろん、部品の互換性は重要なことであり、そのために性能を妥協することは、納得できるものでした。ですから、普通なら、もっと高性能にできる、というのは技術者の愚痴で終わるはずでした。

 ところが、さる事情が、成り行きを変えました。その頃、ザクの後継兵器を巡って、人型兵器で行くか、非人型兵器で行くかを巡って大激論が戦わされていました。非人型兵器は後のモビルアーマーに連なる系列の思想です。ザクの強さが装甲、火力、AMBAC機動にあるとすれば、必ずしも人の姿をしている必要はない、むしろ人の形に囚われると最善の形態を見逃しかねない、というのが非人型兵器派の言い分でした。それは、かなりの説得力を持っており、人型兵器派は焦っていました。ここらで、何か派手なデモンストレーションをぶち上げたい、と人型兵器派は思いました。しかし、そう簡単に、印象的なデモンストレーションのテーマなど転がっていません。そこに出てきたのが、MS-06Jを更に洗練した地上専用モビルスーツが作れるという技術者の愚痴でした。

 即座に、実験プロジェクトとして、それは承認され、MS-07という正規のナンバーとグフという愛称まで与えられました。とはいえ、技術者達も、これが実戦兵器ではないことは良く分かっていました。どうせ地上戦の主力は専用兵器が担うことになるし、開発の目的はデモンストレーションです。

 その結果、徹底的に磨き上げられ、カリカリにチューンナップした蒼いモビルスーツが完成しました。この蒼さは、装甲に使用した合金を磨き上げたときに出る輝きで、塗料すら邪魔であると排除した結果でした。当然、メンテナンスには手間が異様に掛かる代物で、パーツは高価な特注品ばかり。一週間掛けて整備した上で1時間稼働させ、画期的な数値を叩き出して、技術力をアピールするための機体でした。そして、MS-07は、ジオン本国における様々なテストで、ザクを上回る画期的な性能を発揮したのです。

 さて、そのような機体ですから、実戦に使おうなどと思う者は誰もジオン軍にはおりませんでした。しかし、ガルマ・ザビの仇討ち部隊として、ランバ・ラル隊が地球に降下することが決まったとき、それに反感を持って嫌がらせをしたい者達がいました。彼らは、各方面に手を回し、実績の多い安定したザクや、まったく新規に設計されたホバー移動能力のある新型モビルスーツがランバ・ラル隊の手に渡るのを妨害し、その代わり「青はランバ・ラル様のパーソナルカラーでしょう」などと上手いことを言って、まんまと蒼いMS-07を押しつけてしまったのです。つまり、ランバ・ラル隊がMS-07を装備していたことは、単なる嫌がらせの結果に過ぎなかったわけです。

 ところが、事態は誰も想像しなかった方向に向かいます。本来、ジオン地上軍の主力を担うはずだった戦闘機や戦車の開発が、ことごとくずっこけまくってしまったのです。特に、対地攻撃機ドダイが有力な戦力にならなかったのが最も致命的でした。ジオン軍は早急に、ピンチヒッターを捜す必要に迫られました。その時、ザクよりも高性能で、まがりなりにも完成した機体といえば、MS-07を置いて、他にはありませんでした。しかも、ランバ・ラル隊でのMS-07が立派にザク以上の働きを見せたことは、ジオン本国にも伝わっていました。

 「MS-07を量産せよ」と、覆すことができない絶対的権力であるギレン・ザビより命令が下されると、それはいかに理不尽でも実行せざるを得ませんでした。

 ジオン地上軍は、MS-09ドムが量産配備されるまでの間、MS-07を主力に持ちこたえることが要求されました。異様に整備に手が掛かり、暴れ馬のように過剰なパワーを持つMS-07は前線部隊では極めて扱い難い兵器でした。しかし、ジオン地上軍は忍耐強くそれを使いこなし、やって来るはずの本命MS-09ドムまで耐え切ったのです。

 もっとも、MS-09ドムも、MS-07に負けないぐらい気難しい機体であったため、整備兵の悪夢は終戦まで終わることがなかったと言えるのかも知れません。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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