2002年03月24日
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宇宙世紀の駄ッ作機 MS-09R リックドム

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 あまり知られていませんが、ジオンの地上専用のモビルスーツには、最低限の宇宙活動用の装備が取り付けられています。これは、宇宙にある工場から輸送船への積み込みなどの作業を効率よく行うためのもので、けして戦闘に耐えられるものではありません。そもそも、コクピットの気密性も確保されておらず、パイロットは常にノーマルスーツの着用を必要としていたぐらいです。

 とはいえ、通りすがりの技術音痴が、工場と輸送船の間を自力で移動するMS-09を目撃したとき、それが宇宙でも使えるかのような錯覚を抱くことも、1つの事実でありました。

 そこで、ザクの後継機がなかなかモノにならない今、ドムを宇宙用に売り込んでみたらどうか。そんなアイデアが、どこからともなく出てきました。もちろん、地上戦での実績があればこその判断です。まったく新規の機体を売り込むよりも、既に実績のあるドムの派生型の方が売り込みしやすいという要素もあったのでしょう。

 とはいえ、それがどの程度本気の売り込みだったかといえば、疑問も残ります。地上のホバー走行に最適化されたドムを宇宙に持ち込んだところで、それが即戦力になると誰もが信じるとは言い難いからです。

 ところが、この状況は一転します。連邦軍のマゼラン級戦艦が威力偵察のように、時々ジオン勢力下に出てきては、小規模な戦闘を引き起こすようになったのです。このマゼランは、ルウム戦役の時のマゼランではありませんでした。戦訓を取り入れた改型で、モビルスーツの運用能力を持つと共に、対モビルスーツ用の小火器が全方位に大量に装備され、しかも射撃管制システムは全てミノフスキー粒子散布下に対応する目視光学照準装置を装備していました。

 もはや、ザクの攻撃では、ルウム戦役の時のように軽やかにマゼランを沈めることができませんでした。ジオン軍は早急に、このマゼラン改対策を迫られました。

 必要とされたのは、対モビルスーツ火器の射撃に晒される時間を最小にするための大加速力、小火器を跳ね返す重装甲、そして、重点的に装甲を強化されたマゼランのブリッジを撃ち抜ける大火力でした。

 その条件を満たし、すぐにでも量産に移せそうだったのは、その時点では宇宙用ドム開発案しか無かったのです。

 大至急テスト機を納品せよという指示を軍から受け取った技術者はびっくり仰天しました。それまで、宇宙用ドム開発案とは、要するにモビルアーマー陣営を牽制するための時間稼ぎの開発案だと思い込んでいて、本当に開発するための準備など何もしていなかったのです。

 すぐ地上用のドムの生産ラインから1機を抜いて、コクピットの気密化、スラスターの取り付け、AMBAC制御ソフトの高機動対応、宇宙空間対応の火器管制制御システムの取り付けなどが行われました。機体の基本設計をいじっている余裕はなく、ホバー走行時にバランスを取るためのウェイトなど、明らかに宇宙では不要の装備も残ったままでした。

 実際に、ジオン宇宙軍でテストされた宇宙用ドムは、模擬戦でザクにボロ負けしました。ドムは小回りが利かず、ベテランパイロットの乗るザクの名人芸的な機動に対応できず、すぐ背後を取られてしまいました。

 一時は、ザクにも勝てないモビルスーツなど不要という空気も生まれましたが、マゼラン改を沈めるにはザクでは不適切ということも事実であり、「ザクとの適切な使い分けを要す」という但し書きを付けた状態で、MS-09Rリックドムの制式採用が決定されました。

 リックドムは、地上用だけでなく宇宙用装備も持つことから、開発段階でリッチ(Rich)ドムと通称されていました。しかし、リッチのままでは軟弱そうに聞こえるということで、最後のHを取り、リックドム(Ric DOM)となったものです。

 さっそく実戦に投入されたリックドムですが、いきなり大損害を繰り返します。キャメル艦隊やコンスコン艦隊は、最新鋭モビルスーツを優先的に受け取ることができたエリート部隊ですが、ホワイトベース隊と交戦の結果、リックドムはあっけないほど容易に撃墜され、その勢いで、艦艇も全て撃沈されるという大敗北を喫します。格闘戦に不向きなリックドムに、格闘戦慣れしたパイロットを乗せ、そして、連邦のモビルスーツと格闘戦を行わせたことが敗因といえます。

 この事実に、ジオン軍は衝撃を受けます。しかし、この衝撃の受け止め方は、方面によってそれぞれでした。実戦慣れした冷静な指揮官は、リックドムは対艦攻撃に専念すべきで、格闘戦はザクに任せるべきと受け止めました。つまり、リックドム出撃時には、ザクのエスコートを付ければ良いと考えたのです。

 それに対して、ヒステリックに受け止めた方面は、ジオン側の兵器運用の問題とは考えずに、当時流行していたニュータイプ思想に原因を求めました。つまり、ホワイトベース隊のニュータイプパイロット達が能力を異常発達させた結果の敗北であると思い込みたがりました。

 そのような様々な混乱が見られたものの、最終的にマゼラン改を最も多く沈めたモビルスーツの称号はリックドムに与えられるべきものとなり、リックドムは自らの役割を立派に果たしたと言えます。しかし、リックドムは欠陥品であるというあらぬ評判が蔓延した結果、順調に量産が行われていたラインは決戦機ゲルググの生産に転用されることになってしまいました。

 これにより、宇宙用に設計を最適化した改良型MS-09R2リックドム2は、生産に移されることなく、消えていきました。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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