2002年03月25日
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宇宙世紀の駄ッ作機 MA-05 ビグロ(続き)

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 ジオン軍がビグロに期待したものは火力支援でした。つまり、両軍のモビルスーツが接触して格闘戦に入る前に、できるだけ火力で敵の数を減らしておきたい。そのような意図を持ってビグロはジオン宇宙軍に配備されたのです。

 本来、火力支援は、艦艇の大型砲を使った遠距離支援と、ガンキャノンに代表される大火力モビルスーツを用いた近距離支援の2種類があります。しかし、遠距離支援はミノフスキー粒子散布下では有効性が低く、かといって、近距離支援は射撃レンジに入ってから格闘戦に入るまでの時間が短く、やはり有効な打撃を与えられませんでした。

 そこで、これを解決するために必要とされたのが、両者の中間領域で使用できる中距離支援火力でした。大火力モビルスーツよりも有効射程の長い大型砲を搭載し、より遠くから長い時間支援砲撃を行うことができる機動兵器が必要だと考えられていました。

 まさに、ビグロはこのレンジに当てはまる兵器だったのです。

 ところが、誰もが必要性を認めた兵器であったにもかかわらず、いざ生産されたビグロを受領して自分の部隊で使おうという指揮官は現れませんでした。使いたいと思っても、ムサイには大きすぎて載らず、ザンジバルには搭載できるものの、支援メカのために主力兵器であるモビルスーツの搭載数を減らすことは、誰も望んでなどいなかったのです。

 引き取り手のないビグロが増えたために、ジオン軍ではやむを得ず、ビグロだけからなる支援専任部隊を編成し、ちょうど竣工した超大型空母ドロスに配属しました。ドロスは、桁違いに大きな母艦であるため、ビグロを搭載したからといって手狭になる気遣いはありませんでした。

 しかし、ドロスはジオン本国防衛の切り札ともいうべき決戦兵器です。いつまで経っても最前線に出動する気配もありません。そうこうしているうちに、ビグロ隊からはどんどん実戦経験のあるパイロットが引き抜かれ、最前線に送られていきました。結局、ビグロ隊は隊長以外は全て実戦経験のない新米パイロットばかりという状況に陥ってしまいました。もっとも1年戦争も終盤になると、ベテランパイロットは極端に減り、1回出撃して生きて戻れば一人前のパイロットと見なされるような状況でした。新米だらけの状況は、他の部隊でも同じようなものでした。

 さて、ビグロ隊が乏しい推進剤をやりくりしながら訓練を続けているうちに、連邦軍はひたひたとドロスの守る宇宙要塞ア・バオア・クーに迫ってきました。

 いざ最後の決戦へ。

 しかし、ドロスに配属されたパイロット達はどの機種も新米ばかりでした。決戦兵器として国家の総力を挙げて量産されたゲルググは約150機も搭載されていましたが、パイロットのうち実戦経験者は一割程度だったと言われます。もちろん、ビグロ12機のパイロットのうち、実戦経験者は隊長だけでした。

 最初の戦闘プランは、主力のゲルググ部隊と共にビグロ隊は出撃し、ゲルググが敵と接触するまでの間にできる限りの火力で敵の数を減らすというものでしたが、これはすぐに却下されました。新米パイロットの力量では、性能の違うゲルググとビグロの編隊を維持するのは難しいと判断されたからです。また、機数が増えた場合も、編隊を維持するのは難しいことが訓練の結果分かっていました。

 そこで、それぞれの中隊ごとに独立して行動し、ドロスから指示を受けながら部隊ごと単独で戦うものとされました。

 とはいえ、エースパイロット好みに仕上がったゲルググは新米には扱いきれなかったのに対して、ビグロは操縦系が単純で初心者にも短い時間で収得しやすかったと言えます。ゲルググ各隊が不揃いなフォーメーションで出撃していったのに対して、ビグロ隊は故障により出撃できなかった1機を除く11機が、綺麗なフォーメーションを組みながら出撃していきました。そして、ビグロ隊は、ア・バオア・クーに迫る連邦軍艦隊に突撃しました。

 ビグロ隊の隊長は、実戦経験の無い部下のために、いくつかの命令を下していました。

 「まず、格闘戦は絶対にするな。巻き込まれそうになったら、大加速で逃げろ。そして、狙いは巨大で命中させやすいマゼランだけに絞れ。雑魚は全て忘れろ。至近距離で全砲門一斉射撃すればマゼランは沈む。マゼランが沈めばモビルスーツは補給できなくなって勝手に無力になる。一隻沈めたらそのまま加速してドロスに戻って戦果報告と休息。一度に、2隻も3隻も沈めようと欲をかくな」

 その命令を忠実に実践したビグロ隊は、GMには追いつけない大加速で、次々にマゼランを撃沈していきました。

 ビグロ隊は3回出撃し、13隻のマゼランと2隻のサラミス(マゼランと誤認して攻撃したもの)を沈めるという戦果を上げました。しかし、ビグロ隊の3回目の出撃の後、ドロスは沈み、4回目の出撃はありませんでした。

 この間、ゲルググ隊はほとんど戦果らしい戦果を上げておらず、ギレン・ザビが「ドロスはよくやっている」と褒め称えた戦果の多くは、ビグロ隊が上げたものでした。

 もし、仮にドロスに搭載されているのが全て初心者にも操縦を修得しやすいビグロであったとすれば、ア・バオア・クーを巡る戦いの流れは変わっていたかも知れません。しかし、ビグロをあくまで火力支援兵器としか考えていなかったジオン軍が、ゲルググを差し置いて、ビグロを量産することは、絶対にあり得ないことだったと言えるでしょう。つまり、ジオンが勝利する可能性は無かったと言えます。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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