2002年03月30日
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宇宙世紀の駄ッ作機 MA-08 ビグ・ザム

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 Iフィールドという技術は、早くから実現の可能性を予言されていましたが、実際の兵器への応用は遅々として進んでいませんでした。

 機器そのものがコンパクトにできず、かといって、効果範囲もそれほど広くないため、モビルスーツには載らず、かといって、戦艦で使用することは無理という中途半端なものしか作ることができませんでした。しかも、エネルギーを馬鹿食いするため、動力供給には特別な配慮が必要でした。

 それでも、ビーム砲を無力化できるというのは極めて魅力的な効能であったため、Iフィールドの研究は進められ、何とか試作機が完成しました。担当した企業は非人型担当であったため、人型にはせず、手のない足だけの形状となっていました。大きさはモビルスーツの数倍と巨大であり、当然、既存の宇宙艦に搭載して運用できるものではありませんでした。

 さて、実験は大成功でした。戦艦のビーム砲を試作機は軽々と弾いてみせました。この技術を応用すれば、画期的な兵器を開発できることは間違いありません。しかし、これをそのままモビルスーツや戦艦に搭載することもできません。

 そこで、ともかくIフィールドに合わせたサイズで新兵器を開発しよう、ということでプロジェクトが開始されました。

 プロジェクトが目指したものは、一種の無敵駆逐艦でした。いかなる戦艦のビーム砲もはじき返すIフィールドに守られながら、戦艦の装甲をも貫通する強力なビーム砲を備え、敵艦隊の至近距離から次々と戦艦や巡洋艦を沈めていくというものでした。標的としてモビルスーツは含まれませんでした。それは、兵器があまりに大きすぎ、小回りが利かないことによる判断でした。とはいえ、それは重大な問題ではありませんでした。Iフィールド・ジェネレータの小型化は研究が進行中で、少し待てば、モビルスーツ駆逐機の開発も可能であると考えられていたからです。

 ところが、この無敵駆逐艦構想は、予想外の偶然により目標が変わってしまいます。

 無敵のIフィールドに守られた巨大な二足歩行兵器は、ジャブロー攻略兵器構想と重なるところが多かったのです。

 ジャブロー攻略兵器構想とは、膠着した戦争を早期に打開するための構想の一つでした。連邦軍本部ジャブローは、難攻不落の要塞として知られていましたが、内部の地下空洞に入ってしまえば、空洞外の大型防衛施設は全て使えなくなり、容易に占領できると考えられたのです。

 そのためには、空洞内に存在すると予想されるどんな兵器の攻撃も受け止める防御力と、それを破壊する攻撃力、それに、宇宙艦の出入り口を通過できる範囲内のサイズに収まる兵器が必要とされました。この任には、モビルスーツでは不十分でした。既に、モビルスーツの装甲を撃ち抜ける70口径406mm対戦車砲はどこにでもよくある兵器で、ジャブロー内でも大量に生産されていました。これぐらいは弾き返さねばジャブロー攻略兵器とは言えません。そのため、モビルスーツよりはるかに大きな二足歩行兵器が検討されており、そのシルエットのサイズが、Iフィールド駆逐艦構想と酷似していたのです。

 もちろん、それは他人の空似に過ぎません。しかし、国力の乏しいジオン公国は、あらゆる開発計画を無作為に許すだけの国力はなく、この2つの構想は統合されることになりました。

 2足歩行するIフィールド駆逐艦に、要塞攻略のために必要な分厚い装甲や、有重力下の機動力、占領のための歩兵の輸送能力、狭い地形でも有効に動ける形状の工夫などが追加されていきました。

 ともかく全ての要望を満たす兵器を開発すべく、技術者達は昼夜ぶっ通しで働きました。

 その結果完成した兵器は、他に分類しようがないという理由でモビルアーマーに分類され、MA-08ビグ・ザムの名前を与えられました。ビグ・ザムとは、巨大な頂上(Big Summit)を縮めたものと言われます。

 しかし、試作機を用いてジャブロー攻略を意識した実地訓練が開始されると、様々な問題が発生しました。大量のビーム砲を同時に受け止めるとエネルギーの供給量が足りなくなり、移動や砲撃ができなくなり、更に限界を超えるとIフィールドの効力が不足してしまうことが分かりました。しかし、高出力ジェネレータを載せると機体が大きくなりすぎて、ジャブローに入れなくなる恐れがありました。それでも、限界まで機体のサイズを大きくし、可能な限りの出力向上が図られました。

 その他、視界が十分ではなく容易に至近距離に敵の接近を許してしまうであるとか、重心が高いため爆風で倒れやすいであるとか、細かいも問題もありました。

 そして、続出する問題点を解決するために、機体への改修が続けられました。

 機体は大きく無様に変貌していきました。

 それでも、これがジオン勝利の切り札になると信じていた関係者は、昼夜を通して努力を続けました。

 しかし、ある日、実際にジャブロー潜入に成功したシャア・アズナブルよりのレポートが彼らを打ちのめしました。

 現実のジャブローは、当初考えられたような1つの巨大空洞ではなく、いくつかの空洞がトンネルで結ばれたものだということが分かりました。トンネルはモビルスーツが通過するのがやっとであり、ビグ・ザムのような巨大兵器が通ることは、どこからどう考えても不可能なことでした。

 ビグ・ザムを小型化することは技術的に不可能であるため、ジャブロー攻略兵器構想そのものが実現不可能であるのは明らかでした。

 ビグ・ザムは当初考えられたような無敵駆逐艦としての使い方は可能であろうと判断され、連邦艦隊の迫る宇宙要塞ソロモンへ移送されました。ビグ・ザムは、ドズル・ザビ自ら搭乗、指揮することで悪鬼のごとき強さを発揮し、無敵駆逐艦としての本分を発揮しました。しかし、無敵駆逐艦としては不要な多くの装備のために機動性は落ちており、Iフィールドが効果を発揮しない至近距離へのモビルスーツの接近を容易に許してしまいました。

 ビグ・ザムが量産されていれば、という話はよく耳にしますが、現実のビグ・ザムは宇宙艦に搭載運用できず、宇宙要塞ソロモンの宇宙艦用の運用支援設備によってやっと稼働したものであり、実際には宇宙要塞の防衛戦でのみ運用可能な兵器であったと言えます。そういう意味で、もしジャブローが彼らの思うとおりの単一の巨大空洞であったとしても、本当にビグ・ザムによるジャブロー攻略が可能であったかどうか、疑問の余地が残ると言えます。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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