正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
ジオングはMSN-02という制式ナンバーをもらってはいましたが、何せほとんど実績のないニュータイプ用モビルスーツです。人型モビルアーマーとしての実用性は検証されてはいましたが、ニュータイプ専用機としての性能は未知数でした。
そこで、さっそくニュータイプパイロットを載せてテストを行おうとフラナガン機関に要請を出しました。ところが、運悪く、有望なニュータイプパイロットが連続して連邦軍のホワイトベース隊により帰らぬ人となるという事態が続いており、フラナガン機関は貴重なニュータイプを軍に派遣することに難色を示しました。
ジオングの関係者は、フラナガン機関が非協力的だとキシリア・ザビに泣き付きました。
キシリア・ザビは、必ずニュータイプパイロットをジオングのテストにまわすと確約しました。しかし、すぐに派遣できるか分からないので、当面は通常のテストパイロットで出来る範囲のテストを行うようにとも言い添えました。
こうなっては仕方がありません。有線誘導ビーム砲は設計通りに性能を発揮したと仮定する情報をコンピュータシミュレーションで補いつつ、ジオングとザクの模擬戦を始めました。様々な前提条件で、ジオングとザクを模擬戦闘させ、ジオングをどう使えば最善の結果を残せるか調べようとしたのです。
本当はゲルググを模擬戦闘の相手にしたかったのですが、さすがに決戦機をテスト用に提供してくれという話は断られました。
結果はどうやってもジオングの圧勝でした。何しろ、ジオングの装甲はザクマシンガンを跳ね返して、ビーム砲は一撃でザクの装甲を撃ち抜けるのです。しかも加速力もジオングが勝り、ザクが逃げようとしても楽に追いつくことができました。
これでは、テストする意味が全くないということで、どうしてもと頼み込んで、やっとゲルググ1機を、1日だけという約束で借り出すことに成功しました。
今日1日で、取れる限りのデータを取るぞ、と意気込んでその日の模擬戦闘は開始されました。それは白熱したもので、パワーのジオングと、小回りのゲルググが激しく絡み合いながら格闘戦を繰り返しました。
と、そのとき。
すぽ~ん、と切り離し可能なジオングの足が外れたのです。関係者があっけに取られているうちに、足は宇宙の彼方に飛び去っていきました。
テストはそこで中止にするしかありませんでした。一度ア・バオア・クーに戻って足の回収部隊を派遣しよう。そう考えて彼らがア・バオア・クーに戻ったとき、ア・バオア・クーは、既に連邦軍に備えて臨戦態勢でした。もはや、試作機の足を回収するために船を出す許可など、望むべくも無かったのです。
ジオング関係者はア・バオア・クーのドック内で途方に暮れました。
そこにキシリア・ザビからの連絡が届きました。今から、ニュータイプにしてエースパイロットの赤い彗星のシャアをジオングのパイロットとして送るから出撃準備をさせるように、とのことでした。
足が無いけどどうしよう。関係者は顔を見合わせました。
一人、元モビルアーマー開発技師だけは慌てずに言いました。「宇宙空間の格闘戦なら、足がない方が性能が出るはずです」
その場で、彼をシャア・アズナブルに事情説明する係にすることが強引に決定されました。
彼は仕方なくシャア・アズナブルを迎えました。
「足が無いな」とシャア・アズナブルに言われると彼はすかさず答えました。
「あんなものは飾りです。偉い人にはそれが分からないのですよ」
シャア・アズナブルは足のないジオングで出撃しました。
後年、シャア・アズナブルは、この戦いでニュータイプとして異常発達したアムロ・レイに押されてしまったと述べています。シャア自身が、ニュータイプとしての能力の発現が不十分だったためジオングの性能を発揮させることができず、アムロ・レイに対して敗北したという趣旨の発言です。しかし、現実には人型兵器の操縦に慣れたシャア・アズナブルが、足のない兵器に搭乗したわけですから、ジオングを自由に動かせないのは当たり前だと言えます。実際、ザクから足の無いビグロに転向したパイロットの中には無意識的に足を動かしてバランスを取ろうとする者が多かったと言います。この場合、そもそも足の操作レバーが存在しないため、すぐにパイロットは気付くことが出来ました。しかし、ジオングのコクピットには足の操作レバーが存在し、シャア・アズナブルがこれを無意識的に操作した可能性は十分にあります。しかし、この時点でのジオングには足が無く、レバーを操作してもバランスを取れません。これが、シャアがジオングを思い通りに操縦できなかった理由であった可能性は十分にあり得るでしょう。
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