2002年04月17日
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ジオン軍小失敗の研究(2) 武器手持ち方式の功罪

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 ジオン軍の軍備は、当初、連邦軍払い下げの世代遅れの兵器からスタートし、同兵器のライセンス生産を経て、自主設計に進みました。最初の軍用小型輸送艇の生産ラインを設置してからMS-05旧ザクの開発に成功するまでの期間は、20年ほどでしかありません。この短期間で、全ての兵器を完全に自主開発することはまったく不可能と言えます。しかし、政治的摩擦が、仮想敵の技術支援やライセンスを前提にした兵器からの早期脱却を要求していました。

 その結果、既存の兵器をスケールアップして利用するという独特の方法が発案されました。モビルスーツには、人間の約10倍のスケールの手が与えられ、人間用の兵器を10倍にスケールアップして製造したものを、この手を用いて扱うことで、驚くほど短い期間で、連邦に依存しない兵器体系を作り上げてしまったのです。

 ここで重要なことは、モビルスーツの手さえも、既存技術の流用でまかなわれたという事実です。オペレーターの手の動きに連動する大型工作機械の作業アームの技術がもともとあればこそ、この構想は実現可能だったといえます。当然、この種の作業アームは、人間の手の動きを忠実に再現する関係上、人間の手と同じ構造を与えられていました。その技術を、スケールアップした武器を扱うために転用することは容易であったと言えます。

 しかし、これらの技術が、モビルスーツ・サイズの兵器として最善かどうかは別問題といえます。つまり、これは短期間で実用化できるという意味で優れたアイデアであるというだけで、誰もこれが最強の組み合わせであると証明はしていないのです。

 事実、製造と整備という観点から見たとき、手の存在はモビルスーツの弱点であると言えました。独立して稼働する繊細な関節の塊でありながら、武器に生じる巨大な衝撃を受け止めねばなりません。つまり、ザクマシンガンのトリガをタイミングずれなしで引く繊細さと、ヒートホークを全力で叩き付けたときにしっかりとホールドし続ける強靱さの両方が求められたのです。その結果、製造コストに占める手の割合は極めて大きいものとなり、整備における手間の多くが手に費やされることになりました。

 手が特に大きな問題を引き起こしたのは、地球上の戦場でした。関節部には埃やゴミが入り込みやすく、そこを清掃してなめらかに動くようにするだけで整備兵は多くの努力を強いられました。また、ゴミが入り込んで指が動かなくなり、武器の持ち替えができないという事故も珍しくありませんでした。

 さて、武装を機動兵器にマウントする方式としては、手持ち方式は1つの方法でしかありません。別の形のアタッチメントを標準化すれば、容易に多種多様な武装を随時交換することが出来ます。そのようなアタッチメントは、ジオン軍内でも、モビルスーツの低コスト化と信頼性向上の手段として提案されたことがありあます。

 もし、このようなアイデアが実用化されれば、10機に1機はあったと言われる手のトラブルで出撃できない機体も出撃可能となり、それだけで実質戦力が1割増となった可能性があります。また、製造コストや、整備員の負担も軽減できたかも知れません。

 では実際にジオン軍は、手持ち方式ではなく、アタッチメント方式に採用することは可能だったのでしょうか?

 これはノーでしょう。アタッチメントのような新しい標準を決め、それをあらゆる装備の製造に反映させる余力は、戦争準備中のジオン軍にはありませんでした。その意味で、手持ち方式の採用は、ベターな選択だったといえます。

 しかし、戦争が膠着状態に陥ったとき、あるいは、地上専用兵器の開発に踏み切るときなどのタイミングで手持ち方式は見直す必要があったと言えます。

 特に地上専用兵器に関しては、整備負担の軽減のために、ぜひともアタッチメント方式を採用する意義があったといえます。

 しかし、現実には、人型兵器を製造する企業を既得権益として限定するというザビ家の決定が、アタッチメント方式の採用を妨げました。手持ち方式を廃すれば、それを口実に、限定企業以外が利権を求めて殺到する恐れがあったのです。しかし、ザビ家さえしっかりと利権を整理して公平かつ最善の方法を維持する意志と実行力を持っていれば、このような問題を解決することも可能だったでしょう。

 その意味で、ジオンの発展も限界も、ザビ家の能力が決定づけたと言えるかも知れません。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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