2002年04月21日
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ジオン軍小失敗の研究(6) 人事システムの不公正

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 ジオン軍を構成する将兵は、主に全く異なる3つのグループに分けられます。

 1つは、正規の軍事教育が整備される前から軍人となって経験を積んだ現場からの叩き上げ。次は、主にザビ家へのコネを使って上級職に直接就任した官僚型将校。最後は、正規の軍事教育システムで育成された純粋培養の将兵です。

 この3つのグループは、ひそかに反発しあっており、軍としての統一感を欠いていました。叩き上げから見れば、官僚型将校はろくに実戦経験も無いくせに見当違いの命令を出す困った連中でした。官僚型将校から見れば、逆に、叩き上げは軍の秩序を乱す恐れのある危険な存在でした。かといって、純粋培養型将兵は忠誠度は高いものの実力は今ひとつで、どうしても、叩き上げの力を借りねばなりません。純粋培養将兵から見れば、教科書的な正しさを平然と踏みにじる叩き上げは下品な存在と見えました。また、純粋培養将兵から見れば、官僚型将校は賄賂が飛び交う腐敗した者達に見えていました。

 このような状況がジオン軍の人事に影を落としていたことは事実と言えます。人事の問題に関しては、主に官僚型将校が牛耳る世界でしたので、主に彼らの論理で人事が行われていました。

 これは、叩き上げからも、純粋培養からも不評でした。官僚型将校達は、彼らなりの公平と公正を基準として人事を行おうとしましたが、それは階級、勤続年数、資格などを基準とした公平さであって、それらの資料に出てこない特質はあまり評価されませんでした。その結果、ぎりぎりの戦力で最前線を支える部隊から、定期転属と称してベテランを引き抜いたり、あろうことか地上戦のエキスパートを宇宙艦隊に転属するようなことが横行していました。また、士官学校を出ていない者は将官になれないというルールも厳格に適用し、多くの叩き上げの実戦的な指揮官が一軍を率いる立場になれず、実戦経験の乏しい官僚型指揮官に指揮されるという事態も多発しました。

 人事の問題を抱えた典型的な部隊が、ランバ・ラル隊でしょう。ランバ・ラル隊は上から下まで叩き上げで構成された、極めて実戦的な部隊でした。しかし、そのような実力のある部隊構成を維持するために、ランバ・ラルは常に人事部と戦い続けたと言っても良いほどの状況でした。特に、事実上の副官ハモン・ラルの処遇については、最も熱い戦いが展開されました。ハモン・ラルはランバ・ラルの内縁の妻であると言われますが、それと同時に優秀な副官でもありました。事実として、ハモン・ラルの戦闘に対する貢献は極めて大きいものであるにも関わらず、ジオン軍としてはそれを認めていません。あくまで、将校が特権として自分の女を戦場に連れて行ったという解釈なのです。ハモン・ラルがそのような愛人扱いされねばならなかったのは、人事部がハモン・ラルを軍人として副官にすることを頑として認めなかったことに原因があります。その主要な理由は、女性は間接部門にのみ配属するという規定にありましたが、現実にはザビ家へのコネと人事部への賄賂があればいくらでも抜け道がありました。たとえば、ニュータイプと言われるララア・スンは、女性でありながら実戦部隊に配属されていますが、これはキシリア・ザビの鶴の一声だったと言われています。もちろん、ランバ・ラルにコネが皆無だったというわけではありません。しかし、ランバ・ラルは、筋を通すことを自らの名誉であると考えていたようで、あくまで正攻法で人事部に立ち向かおうとしていました。

 このほか、キシリア・ザビは、シャア・アズナブルに少将の階級を与え、一軍を指揮させたいと考えていましたが、これも他のザビ家関係者よりの人事部への横やりで流れたという説があります。

 このような、強い者には忠実で弱い者には官僚的厳格さを発揮する人事システムが、ジオン軍の戦闘力を内側から削いでいったことは間違いないことでしょう。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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