正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
1年戦争における連邦軍は、モビルスーツで負け、そしてモビルスーツで盛り返したと言えます。それは、裏を返せば、連邦軍が極めて熱心にモビルスーツを開発したこととイコールと言えます。1年戦争の連邦の新兵器とは、モビルスーツと限りなくイコールであると言っても過言ではありません。
しかし、これが本当に最善の策と言えるかというと、疑問もあります。古来、画期的新兵器が出現しても、その天敵が同じ種類の兵器とは限りません。たとえば、潜水艦の天敵は潜水艦ではなく、むしろ対潜装備を備えた水上艦であると言えます。また、戦車の天敵は、同じ戦車というよりも、対戦車砲や戦闘爆撃機であると言えます。このような過去の事例から考えれば、モビルスーツの力で勝利を掴んだジオン軍を倒すために必要な兵器は、モビルスーツではなく、モビルスーツの天敵となる兵器であったはずだと言えます。
たとえば地上においては、物陰に隠れた歩兵の放った対MSバズーカの一撃で関節部を破壊されたモビルスーツも珍しくありません。むしろ、モビルスーツ対モビルスーツの戦闘で破壊された機体よりも多いとすら言えます。宇宙でも、至近距離に濃密な弾幕を張る対MS火力を艦艇に装備すれば、モビルスーツの攻撃は防ぐことができました。モビルスーツは構造上、至近距離からの攻撃に特化した機動兵器ですから、至近距離に入れなければそれだけで無力化できます。
これらの戦法は実際に採用され、成果を上げていました。実際、モビルスーツさえ無力化すれば、ジオン勝利の原動力が消えるわけで、あとはジワジワと追いつめるだけで連邦軍は勝てたかも知れません。しかし、実際には連邦軍は、より正確には連邦軍上層部はモビルスーツ無くしては戦争に勝利できないという根拠のない信念に突き動かされ、モビルスーツの開発と量産に、膨大な時間と予算と労力を注ぎ込みました。
そして、この問題は戦後にも尾を引きます。膨大な予算を注ぎ込んで整備したモビルスーツ運用のための設備を、すべて壊して作り直す予算はどこにもありませんでした。その結果、それ以後の連邦軍の機動兵器はGM規格を満たすものしか許されなくなりました。まったく新しい規格の兵器を開発しても、それを運用する施設類を整備する金が無かったのです。
もちろん施設類は順次更新されていきましたが、全てを同時に入れ替える予算は無かったため、GM規格の施設を部分的に入れ替えていくしか方法はありませんでした。
この影響は大きく、実に数百年に渡って、宇宙世紀史に登場する機動兵器は、ほぼ同サイズでかつ人型であるという制約を課せられてしまったのです。
このような流れは、けしてザクを実用化したジオンによって決定づけられたものではありません。1年戦争における連邦軍の態度が、このような流れを決定づけたと言えるのです。
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