2002年05月04日
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宇宙世紀の駄ッ作機 MSM-10 ゾック(続きの続き)

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 ジオン地球軍の多くの者達がゾックに失望しましたが、そのままゾックがうち捨てられることはありませんでした。ジオン軍のモビルスーツはザクを始め格闘戦指向の機種ばかりで、最前線では戦力バランスを欠いていると考えられていたのです。実際に、連邦軍と戦っている最前線では、連邦軍の支援火器からあめあられと降り注ぐ砲弾を羨ましく見ていました。陣地さえちゃんと構築してこもっていればやられることはありませんが、砲弾が降り注いでいる間は身動きが取れなくなります。連邦軍の自走砲に相当する大火力支援モビルスーツは、最前線が望んでいた兵器でもあったのです。

 ともかく、ゾックの陸上での実用性を高めねばならない、ということで、足を中心に徹底的な改良が施されました。足の接地面積を最大限まで大きくすると共に、駆動系を多重化して瞬発力を高めました。その結果、陸上での最大移動速度は、時速50キロメートルにまで高まり、他機種との共同作戦も実現可能になりました。ジャンプ力も、最初の試作機に比べれば数倍に高まりました。

 もちろん、それでも、ザクなどと比較すればお話にならないぐらい低い移動力に過ぎませんでしたが、それを問題視する者は誰もいませんでした。火力支援という性格上、機敏に動く機動力は要求されなかったのです。

 何とか使えそうになってきたぞ、という時に、シャア・アズナブルより増援の要請の連絡が届きました。

 そこで、ゾックの実戦テストも兼ねてシャアのもとに送ることになりました。しかし、シャアの手元に届いたときは話がどこかでねじれており、「ザクの数倍のジャンプ力」があることにされていました。

 シャア・アズナブルは、ゾックという機体の性格を理解しないまま、ゾックを出撃させました。

 ゾックは、ジャブローの入り口を探すという、おおよそゾック向きではない任務を与えられました。

 その後、ジャブロー侵入に際しては、シャア・アズナブルのズゴックと共に行動し、地下空洞に侵入しました。

 しかし、連邦軍はあらかじめ地下空洞の入り口で迎撃すべく、待ちかまえていました。ところが、ゾックの大火力が、入り口付近で待ちかまえていた61式戦車数台を一瞬で撃破しました。この火力には、シャア・アズナブルも、「ほう、これは凄い」と思ったようです。シャアは、ゾックを入り口付近に置き、火力支援を命じました。ゾックの火力が連邦軍を黙らせている隙にズゴックが突入し、シャア得意の近接戦闘で次々に61式戦車や、GMを撃破していきました。

 言うまでもなく、シャア・アズナブルがこれほどの活躍を見せたのは、ゾックの持つ卓越した大火力支援能力のおかげと言えます。そうでなければ、すぐにシャアのズゴックは連邦軍の兵器に取り囲まれ、十字砲火を浴びせられていたでしょう。

 しかし、RX-78が戦線に到着したことにより、状況は一変します。近接戦闘が得意なRX-78と、同じく近接戦闘を得意とするシャア・アズナブルのズゴックが交戦を始めると、互いの距離が近くなりすぎ、火力による支援は不可能でした。ゾックは支援砲撃を一時中止してシャア・アズナブルに指示を仰ぎましたが、シャアも戦闘で手が一杯で適切な指示を出せませんでした。

 この時点で、ゾックは周囲に集まってきた戦車やホバークラフトに砲火を浴びせるか、あるいは、即座に後退すべきでした。しかし、指揮官でもあり、エースパイロットでもあるシャア・アズナブルはエースパイロットとしての仕事に忙殺され、指揮官としての仕事がおざなりになっていました。

 シャア・アズナブルが、不利を悟って後退を決意したとき、ようやくゾックに対して「援護しろ」と命令しました。しかし、通常の3倍と言われる素早さで後退するシャアのズゴックの速度に、ゾックは対応できませんでした。命令された援護の砲撃もほとんど行えないまま、後方にあって支援するはずのゾックは、連邦軍の攻撃の矢面に立たされていました。

 ゾックはRX-78に撃破され、その間に、シャア・アズナブルは撤退に成功しました。

 冷静に状況を見れば、シャア・アズナブルがゾックに対して適切な指示を出さなかったことが、ゾックの損失につながったと言えます。しかし、作戦後にシャア・アズナブルが提出した報告書では、ゾックの機動性の低さのみが強調されていました。この報告書がゾックの開発プロジェクトに幕を引かせたと言っても過言ではないでしょう。

 (補足:ゾックの末路はあまりに印象が薄くて、レーザーディスクを引っ張り出して見てから書きました。ファーストガンダムTVシリーズは、見るたびに発見がありますね。良い作品です)


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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