2002年05月11日
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宇宙世紀の駄ッ作機 チベ級長距離巡航宇宙艦(続きの続きの続きの続き)

Written By: トーノZERO連絡先

 正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。

 木星視察団が海賊に襲撃された、いわゆる木星視察団事件は、いろいろな波紋を各方面に投げかけました。

 まず、地球連邦の世論は二つに分かれました。1つは、サイド3の兵士がそれほど勇猛なら、彼らに海賊どもを蹴散らしてもらおうではないかという一派。つまり、積極的にサイド3の軍事力を連邦のために役立てれば良いという考えでした。もう1つは、サイド3の勇猛な兵士が、もし連邦を攻撃することがあれば、大惨事が想定されるので、即刻サイド3が独自軍事力を持つ特権を剥奪すべきというものでした。

 後の歴史の流れを見れば、後者の意見が正しい懸念を述べていることが分かるでしょう。事実、サイド3は、ジオン公国を名乗り、地球連邦政府に宣戦を布告したのです。

 しかし、この当時の成り行きは、前者の意見に味方しました。サイド3の軍事力を役立てようとする一派は、それを恐れる一派に対して、「それでは、あなたの家族や友人が小惑星帯で命を落とすことになっても良いのですか?」と問いただしました。結局のところ、自分と身内の命が惜しいのは誰でも同じことで、いつの間にか、サイド3の軍事力に小惑星帯の海賊退治を任せるという、それまでの方針が継続されることになりました。

 世論はそれで良くても、うやむやにできないのは、連邦軍でした。最新鋭艦2隻を失い、そして、サイド3のたった一隻の戦闘艦に美味しいところを持って行かれ、まるで面目が立ちませんでした。しかし、転んでもタダで起きる連邦軍ではありません。

 ただちに、連邦軍は、ヴァスコ・ダ・ガマ級とチベ級を比較した資料を作成し、連邦議会に叩き付けました。この資料では、主砲の口径を除く全ての点でヴァスコ・ダ・ガマ級はチベ級に劣っていることが示されていました。

 特に問題とされたのは航続力でした。ヴァスコ・ダ・ガマ級自身には小惑星帯あるいは木星まで航行する能力はなく、外部ブースターの助けを借りて、やっとそれを達成していました。その点で、独力で小惑星帯まで往復できるチベ級に大きく劣っていました。そのことは、単なる航続距離の問題ではなく、エンジンも燃料タンクも装甲の内側に納めたチベ級と違って、危険物を常に艦外に抱え込みながら航行するヴァスコ・ダ・ガマ級は実戦に弱い艦であることが問題とされたのでした。

 資料は、結論として述べていました。なにゆえに、ヴァスコ・ダ・ガマ級はこれほどまでに脆弱で見劣りする艦となったのか。それは、議会による予算削減に原因がある、としたのです。

 本来、地球・月・サイド群の近傍系を活動範囲とする宇宙艦と、小惑星帯や木星系まではるか遠く航行する宇宙艦では、まったく異なる設計の艦が使われるべきでした。しかし、予算削減の結果、近傍系用に設計されたクック級の船体を流用して、ヴァスコ・ダ・ガマ級は建造されていました。クック級の船体では、明らかに必要なものを全て納めることができず、長期間の居住ができるように設計変更するのが精一杯。推力不足は船外のブースターで補うような構造にせざるをえなかったのです。

 連邦軍は議会に対して、そのような主張を述べると共に、宇宙全域で確実に連邦軍が軍事的優位性を得られる最低限の宇宙艦は必要不可欠であり、そのための予算を更に削り込むようなことは、連邦の自殺行為に他ならないと、強く訴えました。

 その結果、宇宙艦建造予算は大幅に増額されました。性能面で、チベ級や、戦い慣れた海賊に対抗することは困難という見地から、クック級、ヴァスコ・ダ・ガマ級の建造はすべてキャンセルされました。そして、後に、サラミスとマゼランと呼ばれることになる新型艦の建造が議決されました。

 さて、木星視察団事件は、サイド3側にも余波を投げかけていました。サイド3では、木星視察団事件は、大きな名誉であり、自信をもたらすものとして受け止められていました。もともと4隻で終わる予定だったチベ級の建造数は、ただちに6隻に拡大され、更に8隻にまで増やされました。

 もちろん、表向きの目的は海賊退治にありましたが、それとは別の秘密の意図が隠されていました。つまり、サイド3の納税免除と自治の特権が剥奪されそうになったとき、軍事力によって地球連邦の影響力を排除し、特権を維持するために、チベが必要なのだというものでした。影響力を排除するというのは、言うまでもなく、チベ級からなる艦隊で、連邦軍の艦隊を決戦を行い、実力で勝つことを意味していました。

 しかし、連邦軍が次世代の主力艦としてマゼラン級のアウトラインを示すことで、状況は一変しました。チベ級を意識し、あらゆる面でチベ級に勝てる艦として設計されたマゼラン級を前に、チベ級の圧倒的優位は風前の灯火となったのでした。

 続きます。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。

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