正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
空中給油機との接触に失敗したファットアンクルは、予定された海域に不時着水しました。そして、乗員はゴムボートに乗って機体を離れました。数分後に機体は海中に消えていきました。
それから、約5時間。
待機しているはずの潜水艦に探してもらうべく、微弱な誘導電波を出し続けながら、ゴムボートは海を漂いました。
ジオンの潜水艦は、ミノフスキー粒子散布下の厳しい環境のため、誘導電波をすぐにはキャッチできませんでした。それでも何回も浮上してアンテナを展開し、やっとゴムボードを発見することができました。
乗員達は無事に基地に戻ることができましたが、機体は失われてしまいました。そして、最後の空中給油を行うはずだった給油機は、連邦の戦闘機に撃墜されていたことが判明しました。
たとえ最後の空中給油ができたとしても、その戦闘機にファットアンクルが撃墜されていた可能性もあり得たのです。
さて、ファットアンクルによるマッドアングラー隊へのモビルスーツ輸送は、多くの教訓をもたらしました。
まず、戦力低下の著しいジオン軍において、緊急的に増援戦力を送ることのメリットは大きいということが分かりました。地球上のどの場所であろうと、重モビルスーツを含めて迅速に輸送できれば、少ない戦力の有効活用になります。
しかし、ファットアンクルをのんびりと飛ばして輸送するのは、あまりに無謀といえました。今回は幸運に助けられて、敵制空権内をかなりの距離飛ぶことができましたが、いつも幸運の女神が味方するとは限りません。
そうなると、何はさておき惜しいのは、ドップの航続距離の短さです。ドップの護衛さえ付けられれば、ファットアンクルでも目的地に到着できる可能性が飛躍的に高まります。局所的な地上戦しか想定せず、長い航続距離を求めなかったのは、大いなる反省点でした。
また、ファットアンクル自身が長距離飛行に適さないというのも事実であり、もっと燃費が良くて長距離を飛べる輸送機を作っておけばという反省も出てきました。
しかし、そうは言っても、戦局は切迫しており、新しい機種をのんびりと開発している余裕はありません。
ファットアンクル自身に、ある程度の装甲、自衛用の火器、大型の増加燃料タンクを取り付けようという提案があり、試作されました。
これはファットアンクル改(VCA-02D)と呼ばれ、急いで量産に移されました。
しかし、重くなった分だけ速度は遅くなり、別の意味で敵の制空権を飛ばすのは危険な機体となってしまいました。
はたして、この機体をどこでどう使うか、議論は迷走しました。
しかし、結論は出ないまま、使わざるを得ない状況が訪れました。オデッサ陥落以降、劣勢にあった北アフリカ戦線が、崩壊を始めたのです。北アフリカ戦線に増援を送らねば、ジオン地上軍はアフリカ大陸から駆逐されかねない勢いでした。
もちろん、ジオン地上軍も手をこまねいていたわけではありません。最新型の重モビルスーツ群が、アフリカ東岸の港にずらりと並んでいました。これさえ最前線に届けば、と誰もが思っていました。しかし、これらの重モビルスーツを最前線まで運ぶ手段がありません。もちろんファットアンクルに積んで飛べばそれで良いわけですが、制空権を連邦軍に握られている状況では、相当に無謀な話でした。
そこで、ジオン地上軍は、ありったけのドップ最新型(DFA-02E2)と、ファットアンクル改(VCA-02D)をかき集めました。ドップで一時的に制空権を握って、その間に一気にモビルスーツを最前線に運ぶという計画でした。
作戦発動の日の早朝、北アフリカ各地のジオン航空基地からドップが出撃しました。それを迎撃するために、連邦もTINコッドにスクランブルを掛けました。しかし、周到に準備されたドップ隊は空を埋め尽くす勢いで、スクランブル待機していた少数のTINコッドを圧倒しました。
この瞬間、北アフリカの空は、ジオンのものでした。
ファットアンクル改は、この隙をついて、最前線に飛びました。
しかし、勢いに乗る連邦軍は、すぐに、北アフリカを航続距離内に持つ全ての航空基地に支援を要請しました。
続きます。
ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と～のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と～のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。
