正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
ジオン軍が大量のドップを一気に投入してきたことに、連邦軍は非常に焦っていました。増援の戦闘機隊は、到着したものから順次戦場空域に投入されたため、最悪の戦力の逐次投入という形になりました。ドップ隊は、数の優位を背景に、散発的に飛んでくるTINコッドを次々と撃墜していきました。
そのはるか低空を、ファットアンクル改は、悠然と飛行しました。気持ちは急いていましたが、ファットアンクルは速く飛ぶことができなかったのです。
そのファットアンクルを狙うTINコッドもありましたが、ドップは文字通り身を挺して、ファットアンクルを守り抜きました。この荷物が届かねば、北アフリカのジオン軍は壊滅するという状況は、ジオンパイロット全員が深く胸に刻み込んでおり、誰もが最後の最後まで徹底的に戦う覚悟でした。
連邦側も、このままでは駄目だと思い、戦闘機隊を集結させてから戦場空域に送り込むように方針を変更しました。
その結果、一時的に、アフリカの空から連邦の戦闘機は姿を消しました。
ちょうど、そのころ、ファットアンクルは最前線の各部隊に到着していました。
最前線部隊は、届けられた最新型のモビルスーツと、各種補給物資に驚喜して喜びました。
連邦の戦闘機隊が大編隊を組んで北アフリカ上空に出現したとき、ファットアンクルは既に荷下ろしを済ませていました。
ジオン軍では作戦は大成功だったと誰もが安堵しました。
しかし、それは早計でした。
連邦の戦闘機隊は、燃料や弾薬が尽き掛かったドップ隊に攻撃を仕掛けました。その数は、ざっとドップの3倍。
そして、一部は、帰還しようと飛行するファットアンクルの攻撃に向かいました。
もはや、ドップ隊は逃げるだけで精一杯であり、ファットアンクルを守る余力はありませんでした。
この日の戦闘が終了した時点で、北アフリカのジオン航空隊は半数以上の機体を失うという大打撃を受けました。そして、残った機体も、そのまま戦闘に耐えるものは少なく、修理のための部品の補給もままならない状況に陥っていました。
つまり、この日、貴重な物資の輸送と引き替えに、北アフリカのジオン航空部隊は事実上、壊滅したのでした。
これ以後、制空権を一時的にも掌握する手段を失った北アフリカのジオン軍は、相互に連携して作戦を行う能力を失い、個々の部隊ごとに連邦の攻勢に防戦し、そして限界に達すると降伏していきました。
しかし、北アフリカの全てを失う前に、1年戦争は終結しました。
ジオン在アフリカ軍司令部と、直接その指揮下にある部隊は、ただちに連邦に対して白旗を掲げ、連邦軍による武装解除を受け入れました。
そして、各所に孤立して点在する部隊を収容すべく輸送機を飛ばすことになりました。連邦は、ミデアを貸そうかと言いましたが、そこはジオンの意地を見せ、北米から補修部品を取り寄せて早々にファットアンクルを修理して、これを飛ばしました。ただし、武装は全て取り外されていました。
ファットアンクルは、アフリカ各所で孤立していた部隊を巡って、将兵を収容しました。そして、アフリカ大陸の赤道付近にある打ち上げ基地に運ぶと、彼らはHLVに詰め込まれ、宇宙へと上がっていきました。もちろん、故郷のサイド3に帰るためでした。
しかし、説得に応じず、どうしても降伏を認めない部隊がありました。
これらの部隊は、ドップとファットアンクルによる最後の補給作戦の結果、最新鋭モビルスーツと物資を手にしていました。そして、彼らには、実際にまだまだ戦える余力がありました。
彼らの説得が終わらないうちに、連邦政府は戦後処理を終了させることを決定しました。なるべく早く、平和ムードを演出したかったためです。しかし、その結果として、ジオン共和国の在アフリカ復員本部は解散となり、地球上からジオン共和国籍の者は全員退去することになりました。
説得工作はうやむやのまま終わりを告げ、アフリカ大陸には、いくつものジオン軍部隊が戦闘力を維持したまま残ってしまうことになり、それが長い間、連邦軍を悩まし続けることになります。
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