正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
ドラゴン・フライが突然意外な空中機動を見せたせいで、慌てたドダイのパイロットとザクのパイロットは、同時にやってはならない操作を行ってしまいました。そのため、もともとバランスを崩しやすい直立したザクは地面に向かって真っ逆様に落ちていきました。
そして、伍長がハッと残されたドダイの方を見たとき、そこには驚くべき光景があったのでした。
何と、さっきまでザクが構えていたヒートホークが、ドダイの機体に深々と突き刺さっているではありませんか。どうやら落下する瞬間に、偶然にも突き刺さってしまったようです。
しかし、巨大な異物が刺さった状態では、普通に飛行することは困難です。ドダイのパイロットが機体の姿勢を維持しようと必死になっているのが、遠くから見ても手に取るように分かりました。ですが、ドダイは機体を傾けたまま、どんどん高度を落としていきます。最後に、ドダイのパイロットは最後の手段と思ったのか、垂直離着陸用のリフトエンジンを吹かしました。ところが、これは事態を更に悪化させました。どうやら食い込んだヒートホークがリフトエンジンにダメージを与えていたようで、食い込んだ側のリフトエンジンは推力が一定しませんでした。左右の推力バランスを欠いたドダイは、機体がロールし始めました。
伍長は、こりゃ助からないぞ、と思いながら見ていると、ドダイはそのまま地面に激突してしまいました。
「おい、速く逃げろ」と思わず伍長は敵のパイロットを応援するようなことを口走ってしまいましたが相手に聞こえるわけがありません。
しかし、ドダイの2名のパイロットはコクピットから這い出しました。一人は重傷に見えましたが、もう一人が彼を連れて、機体から離れました。そして、漏れた燃料が引火したのか、ドダイの機体は爆発しました。
伍長はあらためて落下したザクの方を見ましたが、こちらは爆発の気配は無く、パイロットは気絶したのか、ハッチは閉じたままでした。
伍長は、そのまま残燃料を気にしながら、目的地の前線基地に最大速度で飛ばしました。
そして、着陸するとすぐに馴染みの整備員にエロ本を預け、起こった出来事を報告に走りました。
連邦軍占領地域の後方にザクとドダイが墜落したと聞き、すぐにパイロットを捕らえ、ザクを回収するための部隊が派遣されました。
そして、伍長があっけに取られて驚いたことに、これはドラゴン・フライによるザク搭載ドダイYSの撃墜と認定されてしまったのです。ただの連絡機に過ぎないドラゴン・フライが敵機の撃墜を認定されるなど、前代未聞の大珍事でした。
しかし、これには連邦軍なりの思惑があったのです。つまりは、戦争宣伝です。諦めずに粘り続ければ、こんなライトプレーンでも戦果を上げることができるのだ!と伍長は一躍ヒーロー扱いされました。
伍長は、勲章をもらった他、士官学校入学の推薦を受け、1年戦争終結後に卒業、少尉として任官しました。しかし、非合法エロ本の運び屋をやっていたことがばれ、勲章が剥奪された上に、伍長に降格されてしまいました。
さて、ドラゴン・フライは、戦後、大量かつ安価に民間に払い下げられたため、主にエアレースで活躍する姿がその後数十年に渡って見られました。人気が高いことから、ドラゴン・フライのみのワンメークのレースも開催され、参加しやすさから、人気を博しました。その結果、ドラゴン・フライのみのレースにも、ライト・フライ級、ジュニア・フライ級などのクラス分けが行われるようになりました。
連邦軍自身は、1年戦争後、約10年に渡ってドラゴン・フライを運用しましたが、その後も民間のマニアが多く存在することから、これに対応するため、長い間、補修部品などの製造が継続されました。
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