正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
ケンタウルス・ステーションを破壊するために分派されてきたムサイ3隻。ザクと作業ポッドが激闘を繰り広げている間に、セイバーフィッシュ隊は、この3隻に向けて3発の大型対艦ミサイルを発射しました。普通なら、これで3隻のムサイには戦闘継続できないほどの大ダメージを与えられるはずでした。
しかし、ミノフスキー粒子に照準と誘導のシステムが狂わされ、必中のはずのミサイルは、ムサイのすぐ脇を通過していきました。
これを見たジオン側の兵士は慌てました。てっきりジオンペースで優位の戦いを繰り広げていると思っていた彼らは、予想もしない方向からのミサイル攻撃に驚き、焦りました。
特に旗艦のブリッジをかすめて飛んでいった1発は大きな影響を与えました。
このミサイルは、サラミスが発射したものに違いない。何の根拠もなく、ジオン艦隊の指揮官や幕僚達はそう思い込んでしまいました。ケンタウルス・ステーションから発進したセイバーフィッシュが発射した可能性を考える者は誰もいませんでした。そんな機体がケンタウルス・ステーションから発進すればザクが蹴散らしてくれると彼らは信じていたのです。
さて、もしこのミサイルがサラミスによるものだとすれば、1回の攻撃だけで続きがないのが不自然です。
しかし、サラミスがより大きな艦隊の航路警戒にあたっていたとしたら話は別です。ジオン艦隊を発見したサラミスは、即座に反転して本隊にジオン艦隊発見の報を伝えるはずでした。
サラミスを前方警戒に出すほどの価値がある艦隊といえば、少なくともマゼラン3隻以上を擁する打撃艦隊が想定されます。
いつの間にか、ジオン艦隊の司令部は、マゼラン3隻以上が、ひたひたとジオン艦隊に迫りつつあるという考えに囚われていきました。
もちろん、マゼランが何隻来ようとジオン軍が負けるとは思っていませんでした。しかし、それはザクが手元にあればの話です。ほぼ全機をケンタウルス・ステーションに送った現状で、マゼラン3隻と本格的な砲撃戦を演じた場合、勝てる保証はありませんでした。巡洋艦に過ぎないムサイが、ミノフスキー粒子時代に適応できていないとはいえ、戦艦に勝つのは難しいと考えられていたのです。
ジオン艦隊では、即座に、ザク部隊を引き上げさせることを決定しました。空想上の敵艦隊に発見されるリスクを冒しても、発光信号が打ち上げられ、即時帰還が命じられました。
驚いたのは、ケンタウルス・ステーションです。作業ポッド隊の善戦空しく、あとは降伏するか、それともステーション内の白兵戦を行っても抵抗するかという決断を迫られているとき、突如ザクは引き上げていったのです。
ケンタウルス・ステーションの関係者は首を捻りました。
セイバーフィッシュ隊が帰還すると、更に謎は深まりました。セイバーフィッシュ隊のミサイル攻撃は失敗したというのに、ザクが引き上げた理由が分かりません。
ジオン艦隊の方は、9機出撃したザクが、5機しか戻ってこなかったことに衝撃を受けていました。武装した作業ポッドと交戦したことは報告されましたが、その事実は重視されませんでした。そのかわり、パイロットの多くが実戦経験の乏しい若年パイロットであることから、経験不足が招いた失態とされました。ザクが作業ポッドごときに遅れを取るわけがない、というのが当時のジオン軍人の平均的な発想だったのです。
しかし、残ったザクと若年パイロットだけでマゼラン3隻と交戦するのは困難であると考えられたため、ジオン艦隊は作戦を打ち切り、そのままジオン本国に帰還することが決定されました。
ミノフスキー粒子の濃度が薄れると、ケンタウルス・ステーションはセンサーをフル稼働させて、ジオン艦隊の撤退を確認しました。それと同時に、ルナツーと連絡も回復されました。
事態を重く見たルナツーは、ケンタウルス・ステーションとの常設レーザー回線の設定や、セイバーフィッシュ2個中隊のステーションへの常駐が決定されました。
一方、予想外の作業ポッドの活躍は目を見張るものがありました。彼らの活躍が無ければ、ケンタウルス・ステーションはとうに破壊されていたはずです。そのことに重大な意味があると感じた司令官は報告書を作成し、ルナツー経由でジャブローに送付しました。
続きます。
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