正統があれば異端あり。異端の宇宙世紀史へようこそ。
ボールの予定以上の大活躍は、予定以上の部品の消耗をもたらしました。もともと、消耗することが見込まれた部品は十分に補給が行われていましたが、予定外の酷使によって、消耗が見込まれていない部品の破損が多発しました。
それらの部品は主に、民生用の作業ポッドで使われる部品でした。軍用規格の部品よりも品質が低かったのが、問題をこじらせた原因でした。
しかし、いきなり部品が必要となっても、連邦軍側にはストックもなく、慌てて発注して送るにしても時間が掛かりすぎました。
いったいどうすれば良いのか。宇宙要塞ソロモンを占領し、ア・バオア・クーへ向け出撃した連邦艦隊は、このままではボールの過半数が出撃不可能になりかねない状況でした。
ところが、そこで幸運の女神が連邦軍に微笑みました。連邦艦隊の針路からそれほど遠くない場所に、作業ポッドの製造工場のあったコロニーがあるというのです。その中の倉庫には、部品も多数眠っているといいます。唯一の問題点は、そのコロニーはジオン軍が占拠しているということでした。ジオン軍とて、各種雑用に作業ポッドを使っており、補修部品は必要だったのです。
連邦軍はすぐに、艦隊の一部を割いて、このコロニーを攻略することを決断しました。主力艦隊の約1/3という、大規模な戦力がコロニー攻略に向けて本隊と別れました。
驚いたのは、そのコロニーの守備隊です。何しろ、作業ポッドの部品があるだけの軍事的価値が低い場所ですから、守備隊と言っても、旧ザクや、旧式化した初期型のザクIIが数機配備されているだけで、最新鋭のリックドムやゲルググなどには縁がありませんでした。しかも、ムサイなどの巡洋艦もなく、移動手段はパプワ級輸送艦のみという状況でした。そこに、11隻のマゼラン改を主力とする連邦の大艦隊が迫ってきたのです。
守備隊は、てっきり連邦軍が何か勘違いしていると思い込みました。たかが作業ポッドごときの部品のために、連邦軍が戦艦を並べて攻めてくる理由を彼らは思いつけなかったのです。
守備隊は、このコロニーを連邦に明け渡しても何ら戦局に影響はないと判断し、武器を構えた無人のザクをコロニー前面に並べ、連邦がそれと睨み合っている間に、さっさと輸送艦に乗り込んでコロニー反対側の港から逃げ去ってしまいました。
連邦軍がトリックに気付いたときには、守備隊は既に攻撃できないほど遠くにいました。しかし、一発も撃たずに、連邦軍はまんまと必要なパーツを確保できたのです。
これで、ア・バオア・クーの攻略への障害は無くなったと思った連邦艦隊に思いも寄らない展開が待ち受けていました。
ソーラ・レイの発射です。
これにより、連邦艦隊主力は壊滅的な打撃を受けました。
しかし、ギレン・ザビの思惑と異なり、連邦艦隊主力を一網打尽とは行きませんでした。ボールの部品を確保するために別個に行動していた艦隊は無傷だったのです。これが、1年戦争の運命を決めたと言えるかもしれません。ジオン軍が、「あんな作業ポッドもどき」と馬鹿にしたボールの存在が、結果的に1年戦争の終わり方を決めたのです。
ア・バオア・クー攻略のための最低限度の戦力を維持したままソーラ・レイを切り抜けた連邦軍は、そのまま1年戦争の勝利者への道を突き進みました。
部品を交換したボール部隊は以前にも増して活躍し、「たかがボール」が、新米パイロットの操るジオンの新型モビルスーツを撃破する事態も起こりました。
しかし、終戦に伴い、かねてからの取り決め通り、ボールは全て引退されることになりました。戦争終結に伴い連邦軍の規模縮小の名目のもと、ボールは全てスクラップ業者に売却されることが決まりました。
ところが、そこに「ちょっと待った」と声達を掛ける者がありました。連邦軍の内外には、戦争によって損傷した施設が多数ありました。それを修復するための作業ポッドも数が不足していました。ボールはもともとの設計が作業ポッドですから、作業ポッドとして使おうと思えば使えました。それに着目して、スクラップにするぐらいなら、軍の各種作業用にボールを寄越せと言うのです。
続きます。
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