2003年11月20日
川俣晶の縁側辛口甘口雑記 total 2782 count

SCOによるLinux訴訟はBSDにも発展するか?

Written By: 川俣 晶連絡先

 かなり話題性の高い出来事なので、多くの人が知っていると思いますが、SCOという会社が、Linux関係のソースコードに著作権侵害があるとして訴訟を起こしています。

 (私自身は、SCOの主張が正しいか間違っているかの結論に関する意見は何も持ち合わせていません。念のため)

 しかし、このような事態はけして悪いことばかりではないと思います。

 少なくとも、実際のLinuxとは一致していない、夢と理想と無料のLinuxという虚像を作り上げて浮かれまくっている人達が頭を冷やす良い機会だと思います。(まあ、頭を冷やすどころか、更に過熱して目の前が見えなくなっている人達もちらほら見かけますが……)

 それはさておき、この訴訟が、LinuxだけでなくBSDにも波及する可能性が出てきたようです。

SCO、訴訟対象を BSD/OS にも拡大か

 もし、BSDにまで波及すると、実際にFreeBSDサーバを動かしている私のところにも影響が波及する可能性がありそうです。

 BSDに関して言えば、そもそも現在のフリーBSD文化は、ソースコードの著作権の問題を契機として生まれたようなものだと思います。

 専門でも当事者でもないので、もの凄くいい加減なことを曖昧な記憶だけを頼りに書いてしまいますが(関係者の皆さんごめんなさい)。

 もともとBSDといえば、AT&Tという私企業の所有物であるUNIXから派生して生まれたものです。しかし、AT&TがUNIXを商品として売ろうと思ったことから、研究者が自由に使えなくなったわけですね。そこで、明確に商用のソースコードと分離したフリーな世界の必要性が生まれたわけです(GNUなども、このあたりの歴史的な流れから生まれたものではないかと思います)。そして、BSDのソースをAT&Tに著作権のあるコードとそうではないコードに分けて、そうではない部分がフリーになったわけです。それを起点にして、足りない部分を足していったのが386BSDなどのフリーBSD OSと言うことになります。そのような出自からすれば、当然、BSD系OSでは、著作権に関係するソースコードの管理は正しく行われているはずのものです。しかし、既にあの時代からは時が流れて、そういう話をまったく知らない若者が活動に参加していたりすることもあるでしょう。そこで、どこかから問題のあるコードが紛れ込んできている、という状況が無いとも言えません。それを考えると、今ここで、それを検証するのは悪いことではないと思います。

 少なくとも、私企業の販売戦略に振り回されないで安心して誰も使える基本ソフト一式が、完全にソース公開されていることは、この世の中では必要なことだと思います。しかし、それは著作権や知的所有権を否定することではありません。これらの権利と正しく折り合った形で、安心して使えるソフトであるべきです。

 著作権や知的所有権は、強者が弱者をいたぶる凶器という一面があると同時に、弱者が救済される手段として使える局面もあります。あくまで、これらの権利と正しく向き合った安全かつ安心なものであって欲しいと思います。