2003年11月28日
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もっと熱く! プログラミングの「温度」を問題にするプログラムはあり得るか?

Written By: 川俣 晶連絡先

 11月22日に、トーノZERO氏が、ちょっと気になることを書いています。それは、カレイドスターというアニメ(テレビ東京のカレイドスター紹介ページ, カレイドスター公式サイト)の感想文、ステージの温度が足りないということの意味!?の中に書かれた言葉です。その部分を以下に引用します。

ステージの温度が足りない、という言葉の意味は、実際には様々な分野で同じような状況があるのでしょう。プログラム開発にも、アニメの製作にも。

 これは、かなりグサッと来る言葉でした。

 実際に、私も熱血プログラミングなる言葉を使って、プログラミングの温度を問題にしてきた訳ですが、実際にどこまで本気でそれをやっていたかと言うことになると、それはかなり甘いものでしかなかったと言えます。

 本題に入る前に、この「ステージの温度が足りない」という言葉がどういうものであったかを簡単に紹介しておきましょう。

大スター、レイラ・ハミルトンが問題にしたこと §

 カレイドスターというアニメは、カレイドステージと呼ばれる架空の劇場でスターを目指す少女達の話、と言えます。そこで行われるショウは、「それはサーカスでもない、ミュージカルでもない、マジックでもない世界的に大人気のエンターテイメントショウ」であるとされています。場所はアメリカの西海岸っぽいであるように描かれていますが、主人公は、日本からそこに乗り込んでいく「苗木野そら」です。そして、少女達が目指す大スターとして、「レイラ・ハミルトン」という女性がいます。

 そんなカレイドステージ存続の危機が起きます。苗木野そらとレイラは過酷な特訓の末、絶対に無理だと言われる「幻の大技」を会得し、それを公演することで危機を乗り切ります。しかし、練習中のミスにより肩を痛めたレイラは2度とカレイドステージの舞台に立てない身体になってしまいます。レイラはカレイドステージを引退します。

 カレイドスターという作品は、苗木野そらの物語であるため、その後レイラはほとんど登場しません。しかし、ここで問題にされるレイラの台詞の意味を説明するためには、レイラのその後について語っていく必要があります。

 レイラはキャシーという演出家に惚れ込んで、過激なアクロバティックなアクションを含まない普通の演劇の世界に行きます。そして、さほど大きくない劇場で、主演女優として活躍します。

 しかし、レイラは、「ステージの温度が足りない」という問題について、キャシーが理解できないという問題に直面します。ステージの温度とは、明示的ではないにせよ、カレイドステージでは常に問題にされてきたことだと言えます。一言で言えば、上手に完璧にこなすだけではステージに立つ価値があるとは見なされないと言うことです。たとえば、超人的に上手くミスもなく完璧な演技を見せても不可であるというエピソードがあります。淡々と完璧な演技を行うだけでは観客が退屈してしまい、注意力をステージ上に引き留めておけない状況が起こっていたのです。

 そこで、レイラは、「ステージの温度」に関する問題をキャシーに分からせるために、一計を案じます。まず、あるシーンで自分のバックで踊るパフォーマーを、プロデューサーにも演出家にも相談無く、クビにしてしまいます。そして、丁度休暇に入るところだった苗木野そらを1週間だけ呼び寄せます。そのとき、レイラに憧れてカレイドステージに入団し、苗木野そらを厳しくライバル視するメイ・ウォンも一緒にやってきてしまいます。メイ・ウォンは、レイラに認められたいために、苗木野そらではなく自分を使えと必死に訴えます。そこで、キャシー達は、激しくライバル心を燃やす苗木野そらとメイ・ウォンの二人をステージに出すことを決定します。

 ステージの幕が上がる直前、レイラは二人に「私からサロメの役を奪うぐらいの気迫でステージに上がりなさい」と言います。そこで主演女優レイラのダンスと、その背景で激しいアクションを見せる苗木野そらとメイ・ウォンは、観客の目を自分に引きつける真剣勝負となる演技をステージ上で繰り広げます。苗木野そらとメイ・ウォンがライバル関係、競い合う関係にあるのはもちろん、「役を奪うぐらいの気迫で」とレイラから挑発された二人は、レイラとも競い合う関係になります。そこでは、けして誰もが自分の役目を完璧にこなすだけで良いとは思っていません。それ以上の激しい熱意が激突します。ステージの温度が上がっていたわけです。

 その結果、1週間の出演が終わって苗木野そらとメイ・ウォンがカレイドステージに戻る際、レイラは「おかげで、ステージの温度が足りないっていう意味をキャシー(作者兼演出家)も理解してくれたわ」という言葉を口にすることができたわけです。

プログラミングの温度は問題にできうるか? §

 さて、以上のような話を元に、トーノZERO氏は、ステージの温度が問題にされることは、「様々な分野で同じような状況があるのでしょう」と書いていて、その具体例としてプログラム開発を挙げています。

 では、本当に、レイラが「ステージの温度」を問題にしたように、「プログラミングの温度」は問題にできるのでしょうか。

 自分の仕事を完璧にこなすだけで終わり、という状況は不可として、それ以上の熱い何かを要求するプログラミングはありえるのでしょうか?

 というわけで、問題提起編としてはここで終わりです。

 この続きが、どんな風に展開していくかはまだ分かりませんが、熱い話になりそうな気がします。

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