2003年12月10日
川俣晶の縁側過去形 本の虫感想編 total 2976 count

北方狩猟民の民族考古学 佐藤宏之 北海道出版企画センター

Written By: 川俣 晶連絡先

 どういう経緯で買った本か忘れてしまいましたが、ちょっと変な本という感じがします。長らく放置されていたのですが、読了できないのもシャクに障るな、と思って、通院の電車の中で読み切りました。

 既に最初の方は忘れてしまったし、これらの問題を正しく把握する基礎も出来ていないので、いい加減な説明になってしまいますが。

 それでも、あえて書くなら。

 この本の多くは、民族考古学について語ることに費やされています。

 たとえば、縄文人がどのように罠を使って猟をしたのかを考えるために、現代の様々な狩猟を行う民族を調べる、ということを行います。

 最初は、このようなやり方を怪しげだと思いました。

 発掘を通じてしか分からないような時代に行われていたことを、時代も地域も異なることから推測するというのは、あまり根拠がないように思えたわけです。

 しかし、それは間違いでした。

 これは、身近な現代の類推で過去を見る安易な方法に対する、より的確な手法の主張であったのです。民族考古学の前提は、時代や地域の相違を超えて一定の形に収れんしていく形があり、それは未知の時代に行われていたことを推測するために使えるというのです。それが完全に何かを確定できることではないことを著者も認めています。しかし、身近な現代からの類推よりは、遥かに真相に近づける手法なのでしょう。

 この本は、かなりスケールの大きな話から始まるので、最後まで読み通さないと、著者の主張が見えにくい面があると思うし、どこまで的確な内容を書いているのかも私には分かりません。しかし、ちょっとした知的な冒険という趣があるので、そういうものが欲しい読者は読んでみると面白いかも知れません。