誰が言い出したのか、まことしやかに流布される謎の解釈。
今回のIT都市伝説はこれだ!
1K(キロ)バイトは1024バイト §
コンピュータの世界では2進数が使われています。ですから、記憶装置などは2進数で切りの良い単位の容量で扱うと効率が良くなります。そのため、10進数で見ると中途半端に見える数値で一区切りとすることが行われています。たとえば、日常生活でキロといえば1000を意味し、1キログラムは1000グラムにあたります。しかし、コンピュータの世界で、1キロバイトは1024バイトに当たるのです。
キロは小文字のk。大文字のKではありません §
通常、キロは小文字のkで表記するので、大文字のKを記述することは間違いと言うことになります。
しかし、コンピュータの世界では、大文字のKという単位が使われます。これは、キロではなくケーと読みます。
この2つの間には、小文字のk(キロ)が1000に対応するのに対して、大文字のK(ケー)が1024に対応するという相違があります。
大文字のK(ケー)は、1024などという10進数では半端な数値を使うことから分かるとおり、日常生活に関わってくることはまずほとんどあり得ない単位でした。しかし、例外的に「ISDNは64K通信が可能」といった形で、単位としてKが日常生活の中に入ってくる場合があります。ところが、これも怪しげな部分があることが分かってきました。次にそれを取り上げます。
ISDNは64K(ケー)通信が可能 §
ISDN(INS64)は64K通信可能なBチャンネル2本と16K通信可能なDチャンネル1本から構成されます。2本のBチャンネルを使用するとロクヨンロクヨンイチニッパということで、128K通信ができます。つまり、1K=1024、64K=65536ですから、65536+65536=131072bpsの通信が可能となります。
実は64Kではなく64kだったらしいISDN §
うっかりISDNは64Kと言われているので、65536だろうと思っていましたが違うようです。ちゃんと調べたことがなかったのですが、これを書くついでに調べたところ、それが分かってきました。
ISDNの技術仕様ということで、2. ユーザ・網インタフェースの概説(PDFファイル, 9pages 330K)を見てみると、2.2.1チャンネル種別のところに、チャンネル種別Bのところに、チャンネル速度64kbit/sと書かれています。kは小文字です。大文字ではありません。他に、いつくか資料を当たってみましたが、まっとうな技術資料で大文字のKで表記されたものはありませでんした。つまり、64kと小文字のkで表記されていました。
どうも、ISDNの64Kとされているものは、実は64000つまり64kの方が正解であるようです。
特異な使い分けがなされるKとk §
メモリやディスクなどの容量の表記は、Kで足りなくなるとM(メガ)に進み、更にその上のG(ギガ)、T(テラ)なども使われるようになりました。これらは、1000に対応する場合と、1024に対応する場合があります。つまり、1Mが1000Kになる場合と、1024Kになる場合があります。
しかし、M、G、Tなどには、Kとkに見られるような使い分けがなぜか見られません。
もしも、Kとkが注意深く使い分けられた文書であれば、そこからそれが1000を意味するのか1024を意味するのかを区別できます。しかし、M、G、Tなどはそのような区別ができません。良心的な文書であれば、それらの単位が1000を意味するのか1024を意味するのかを明示しています。
とはいえKとkの使い分けは明確ではない §
実際の使い方を見ると、K(ケー)とk(キロ)の使い分けは、1970年代末の最初のマイコンブームの時代から曖昧であって、誤用と混乱は日常茶飯事でした。その伝統は現在まで続いており、Kとkを正しく使い分けた文書を書いたからと言って、その意図が正しく読者に伝わる可能性はそれほど高くないと言えると思います。単位の使い分けが重要な意味を持つ場合は、別途どういう単位を使用しているかを明確に付記した方が安全でしょう。逆に、大ざっぱな大きさだけ示す場合は、単位を曖昧に使ってもさほど問題はないとも言えます。単に桁が分かれば十分という分野であれば、Kとkを誤認識しても、さほど大きな問題にはなりません。