2004年05月04日
トーノZEROアニメ感想GANTZ ~The first stage~ total 3374 count

出来の悪いオタクのマスターベーションのような世界で逆説的に見せる弱い人間達の秀逸なドラマ!?

Written By: トーノZERO連絡先

 謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!

 今日のGANTZの感想。

サブタイトル §

第四話 っていうことは、あの時

あらすじ §

 やっとネギ星人との戦いから解放され、家に戻ることができた玄野計ですが、そこでカツアゲの標的にされてしまいます。

 お金を要求されても、そんな大金はありません。

 そこで、あの黒いスーツを着て、払わないと言いに行きます。

 しかし、スーツは力を発揮せず、歯を集める趣味を持った不良に殴られてしまいます。

 殴られながら感覚も無くなっていきますが、岸本恵のことが思い出されて勃起します。

 するとスーツが凄い力を発揮して、不良を殴り倒します。

 そして、格好良い台詞を言って、そこを立ち去りますが、身体は恐怖に怯えたままでした。

感想 §

 GANTZという作品は、最初、何をどうしたいのかが非常に見えにくい感じを受けました。ただ、けして悪くはないという感触もありました。特に、自分の都合ばかり独白し続ける軟弱な主人公が、なんだかんだ言って、ここぞというところでは自分から飛び出して何かをしようとする、という部分には本質的な善意を感じさせられました。

 それで、何となくこれまで見ていましたが。先週ぐらいから、これは感想をわざわざ書く価値があるのではないだろうか、と思い始めました。というよりも、多くのアニメファンによって価値が見過ごされるのではないか、という危惧を感じたので、一言書いておいた方が良いのではないかと思った、と言った方が良いかもしれません。(まあ、単なる個人的な思いこみに過ぎませんが)

 ここまでの展開を要約すると、要するにネギ星人と戦う戦士として高校生の主人公が呼び出されるという、いかにも出来の悪いオタクのマスターベーションのような話です。ただの高校生が、戦士として呼ばれ、凄いスーツや銃を与えられるなど、どう考えてもあり得ない話です。しかし、そのあり得ない話を、リアルな自分の物語であるかのように喜んで歓迎する人達もいます。つまり、そういうレベルの非常に陳腐な設定のドラマであると。そういうことが言えます。

 しかし、そこから先が特異です。この作品では、そういう陳腐な設定を立てながら、そこで起こるべき出来事や、それに遭遇した人達のリアルな受け止め方を、淡々と描きます。たとえば、銃で宇宙人を撃ち殺せ、と言われても、はいそうですかと簡単に引き金を引けるわけがありません。普通なら、殺人に対する禁忌感から、簡単に殺せるわけがありません。そういうことを、丁寧に1つ1つ描いていくことによって、陳腐な設定が逆にリアルな人間らしさを浮き彫りにする形になっていると感じます。リアルに迷い、怯え、試行錯誤する人々を描くことで、この作品は新しい境地に達しようとしているように思います。

 特に、今回は宇宙人と戦うという状況から、急に不良からカツアゲを食らうというごく陳腐な日常の話にスライドするところが良心的で面白いですね。どちらの状況も、主人公には同じぐらい怖い問題であるということ。そこが、ある種のリアリティとして描かれているのが良いですね。そして、対宇宙人用のスーツが、不良と対決するために使われてしまう状況。これも、ある種のリアリティですね。

 それはさておき、この作品では、カメラを自由自在に動かす映像も、新鮮な魅力があります。3DCG技術がアニメの世界に入り込んできたことで、カメラの自由度は飛躍的に上がっているはずです。それを意識的に活用しようと言う試みが、今ここで行われているわけですね。しかも、サクラ大戦活動写真などで見られる上品な動かし方ではなく、もっと大胆な動きです。カメラとライティングというのは、アニメ関係者の不得意分野かもしれないという印象もあるので、期待したいところです。

今回の一言 §

 岸本恵も、なかなか凄い境遇ですね。本体の自分が生き延びてしまったために、コピーの自分は居場所が無いという、なかなかシュールな状況です。それを目の前にして、いったい何が起こるのか。それをどう描くのか、期待したいところです。