2004年06月02日
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時代アニメ論: 浮浪雲

Written By: トーノZERO連絡先

概要 §

 浮浪雲は、ジョージ秋山原作のコミックを劇場版アニメとしたものです。

 武士を捨てたぐうたらな男が、実はめっぽう強いと言うことで、新撰組品川屯所を名乗る若い武士からつけねらわれます。さらに、ぐうたら男の出来の良い息子は坂本龍馬にかぶれて、龍馬の死を聞くと飛び出していく。そんな幕末の親子のドラマです。

ここが見どころだ! §

 劇場版の戦国魔神ゴーショーグンと同時上映だったと思います。ゴーショーグンを見に行って、偶然にもこれを見てしまい、「これは凄い!」と思いました。

 特に主人公が新撰組品川屯所を名乗る若い武士と戦う羽目に陥るシーンは絶品です。

 新撰組の男は、主人公の長い得物を封じるために竹林に誘い込んだまでは良いものの、相手の居場所を見失い、焦って刀を振り回して竹を切りまくります。そして、後ずさると、すぐ脇に主人公の得物の切っ先が背後に。敗北を確信する新撰組の男。しかし、ハッと気付くと、主人公をここに誘い込むために使った夜鷹といちゃついていて、得物は地面に突き立てられていただけ、ということが分かります。それによって、単なる敗北どころか、人生が終わるぐらいの大敗北であることを思い知らされます。

 この間の映像の美しさ、動きの魅力、そして結末の意外性の演出。実に見事なものです。

 ここで、武士をやっているなど馬鹿馬鹿しい、という幕末のある種の雰囲気を上手く描きながら、同時に、ありもしない新撰組品川屯所などというものを平然と持ち出してドラマを盛り上げてしまうあたり、時代アニメの特徴と考える以下の条件の原型を見る感じがします。

  • 歴史的なリアリティをストイックに追求する部分がある
  • 現実の歴史からの痛烈に離反する部分がある