期待に違わぬ内容でした。
多くの読者には、大きく期待をはぐらかされる内容かもしれませんが、まさに私が期待したとおり。
帯に書かれた「西之園萌絵ふたたび事件に遭遇」というコピーに嘘はありません。遭遇はします。しかし、推理をして事件の核心に迫るということもなく、本作での西之園萌絵の役割は、本来一般人がアクセスできない警察の情報にアクセスするための手段として機能しているに過ぎません。
そのかわり、加部谷、海月、山吹の3人組がとても良い味を出して大活躍。中でも、海月のキャラクターが鮮烈ですね。最初から最後まで面白い奴です。
更に推理の結果も、単純に犯行やトリックを明らかにするのではなく、もっと別の、解釈に揺れがあるストイックに知的水準の高い内容であるのが興味深いですね。最後の突き落とし事件など主犯がどちらであるか明らかにならないまま終わってしまいますが、それがある意味で知的な態度です。
というわけで、西之園萌絵や犀川を望むであろう多くのファンと異なり、私はこの新シリーズがけっこう気に入りました。