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2004年11月25日
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トラブル・ブルドッグ

Written By: 遠野秋彦連絡先

 世界1トラブルの多い村があった。

 そのことに、村人達はほとほと困り果てていた。

 人間関係にいざこざは絶えないし、農作物が豊作になることも滅多になかった。しかも、珍しく大豊作になると相場が急落して売れば売るほど赤字になったりするのだ。

 トラブルの元凶は、村はずれに住んでいる虎縞のブルドッグだと誰もが噂していた。その証拠に、彼が長期間村を離れると、トラブルはぴたりと止んだ。

 しかし、彼に「村を出て行け」という勇気のある者は誰もいなかった。何せ、彼は乱暴者の荒ぶるブルドッグだったのだ。彼が村にいるだけでもトラブルが多いのに、彼に関わろうとすると、かえって怪我をさせられてトラブルを増やしかねない危険があった。

 一方のブルドッグの方は、自分が加害者であるという意識など、さらさら無かった。それは当然のことである。彼がいるとトラブルが増えると言っても、彼自身が意識的に引き起こしているわけではないのである。彼はいるだけでトラブルを周囲に引き起こしていたのだ。ただ、彼に分かっていることは、村人達が彼を嫌っているということだけであった。しかし、彼は別の土地に移住する気はなかった。父と母が残した土地を、自分の子供に継がせるのが人生の目標だったからだ。

 さて、子供に土地を継がせるには、子供を作らねばならない。そのためには嫁さんが必要である。ブルドッグは村の娘達に結婚を申し込もうとしたが、誰からも避けられ、あまつさえ、彼女らは適齢期になると大慌てで村の外の男に嫁がされていた。ブルドッグと結婚させないためであるのは明らかだった。

 やむを得ず、嫁さんは諦めるとしても子供だけでも、と思い、村の女達に強制的に子種を仕込んでまわったこともあった。ブルドッグから見て、愛情など感じられない女達が相手であったが、やむを得なかった。愛も感じていないのに対象とされる女達も不幸という他ない。結局、妊娠に至ったものはなく、苦労の割に成功しないものだとブルドッグは落胆した。実際には、妊娠に至った女性もいたが、それはブルドッグに対して隠し通されただけのことであったが。ともあれ、正しい性教育など受けたこともないブルドッグは、この結果を、愛情のない相手にいくら子種を出しても無駄、と誤解した。

 さて、ブルドッグが落胆していた頃、遠くの大都会から聖女が出現したという噂が伝わってきた。すぐに聖女のことを王侯貴族までがこぞって歓待し、更に王宮に匹敵する豪華な邸宅に住むようになったという。聖女は、あらゆる災厄、貧困、病気などから人々を救う奇跡の力を持っているという。聖女が何かをするのではなく、聖女がいるだけで周囲では奇跡が起こるのだという。

 村人達は、聖女について噂し合った。まるでブルドッグとは正反対の人だと。そして、この聖女がずっと村にいてくれれば、ブルドッグの力と打ち消し合って、世界1トラブルの多い村の名前を返上できるかもしれないと皆は思った。しかし、大都会で大人気の聖女様が、大邸宅を出てこんな辺鄙な村に来るだけでも困難であるのに、その上、永住まで望むとは高望みでありすぎると誰もが思った。

 ところが、この聖女は、すぐに邸宅を飛び出して、特に災厄、貧困、病気などの多い危険地帯を回り始めたという。

 一時的にでもトラブルが減ればラッキーとばかりに、村人達は盛んに窮状を訴える手紙を聖女宛に書いて、ぜひ村に来て欲しいと訴えた。

 しかし、どの村も我が村こそが世界1不幸だと訴えていたので、聖女が村に来るまでにはかなりの時間を要した。

 聖女は、疫病に滅び掛けた村2つと、国境紛争で焼け落ちた国境の街を救ったあと、とりたてて常識的に何の問題もない村を3つほど巡ってからやって来た。

 村人達は、一張羅に着替えて、聖女を迎えるために街道筋に出た。そして、たった一人で歩いてくる聖女を見て息を呑んだ。

 輝くばかりに美しいシルバーブロンドの髪を持ち、白い絹の薄布で身体を覆った聖女は、まるで地上の生き物ではないかのように美しかった。年齢はまだ二十歳そこそこぐらいだったろう。しかし、彼女の近くにいるだけで、誰もがあらゆる問題から解放されたような気分になれるのだった。

 しかし、聖女は村人達の目の前で、ブルドッグによってさらわれていった。村人の誰も、聖女自身も予想していなかった意外な出来事だったので、誰もがあっけに取られている間にあっさりと成功してしまったのだ。

 我に返った村人達は、慌てて一張羅を荒事に耐えられる作業着に着替え、武器を手にブルドッグの小屋に詰めかけた。

 彼らが到着した時、既に状況は破滅的な段階に達していた。

 つまり、ブルドッグによる聖女の強姦が完了していたのである。

 処女であった聖女は、全裸で股間に赤い色を見せながらブルドッグの万年床の上に放心したように横たわっていた。

 「なぜよりによって聖女様を襲ったのだ!」と村人達は叫んだ。

 ブルドッグはそれに応えた。「一目で愛してしまったからだ。愛さえあれば子供はできる!」

 ブルドッグが何かを誤解していることは、村人達にはすぐに分かった。しかし、いつものように、村人達は無力であった。ブルドッグの腕力で、村人達はすぐに追い払われた。

 村人達は、困った状況になったと額を寄せ合って聖女救出の方法を相談していた。軍隊の力を借りる他はないだろう、ということで将軍様宛に軍隊派遣を要請する手紙を村長が書いた。

 しかし、さっぱり軍隊はやって来なかった。日々は過ぎ去り、その間、ブルドッグによって引き起こされるトラブルは姿を潜めていた。確かに、聖女の力はブルドッグの力を相殺していたのだ。

 トラブルが少ない日々が続くと、いつの間にか村人達は、いつまでも聖女がブルドッグのところにいれば良いと思うようになっていた。

 そんなある日、軍隊が村を目指してやって来た。

 村は大慌てになった。軍隊を呼んだのは確かに自分たちであるが、今は聖女を救出されて欲しくはなかったのだ。しかし、いくら何でも世界の聖女をブルドッグのところにずっと置いておいて欲しい、などとは言えない。軍隊に協力するしかなかった。

 軍隊は村長を道案内に立て、即座にブルドッグの小屋を包囲した。

 軍隊は、ブルドッグに聖女を渡せと命じた。

 すると、輝くばかりに美しい聖女が小屋から出てきた。みすぼらしい粗末なボロ布をまとっただけの姿であったが、そのミスマッチがますます聖女の美しさを引き立てた。

 軍人達は安堵した。

 どうやらブルドッグは大人しく聖女を解放したと思ったからだ。

 しかし、聖女は良く通る美しい声で言った。

 「私が世界に不幸を振りまかずに済むのはここだけです。私はここを動きません。そして、ブルドッグの妻になります」

 その言葉の意味が分からず、軍人達は狼狽した。

 軍隊の指揮官が言った。「世界の不幸とはいったい何のことですか。聖女様は幸福を振りまいてきたではありませんか」

 聖女は忌々しげに首を振った。

 「幸福? 奇跡の力で何でも解決してしまうことが幸福ですか? 私の周囲の者達が奇跡の力に依存するようになって努力を忘れ、堕落する姿をたくさん見てきました。だから、私は他の人達が不幸になるのを防ぐために旅に出ました。同じ場所に長期間留まらないようにしたのも、不幸を振りまかないためです。一人旅だったのも同行者を不幸にしないためです。しかし……」

 聖女が振り返ると、小屋からブルドッグが出てきた。

 聖女は彼に微笑みかけながら続けた。

 「彼のたぐい希なるもう1つの奇跡の力と一緒になれば、2つは打ち消し合って消えることが分かりました。それに……」

 指揮官はつり込まれるように言った。「それに、何ですか?」

 聖女は答えた。

 「彼は私を愛しています。奇跡を起こす便利な道具ではなく、子供を産めるただの女として。これほどの幸せは女としては他にないのではなくて?」

 指揮官は、他にも女の幸せはいくらでもあるだろう、と思ったがそれは口に出せなかった。それを主張しても、今の聖女の幸福の前では、単なる屁理屈にしかならないような気がしたためだった。

(遠野秋彦・作 ©2004 TOHNO, Akihiko)

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