2005年01月02日
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モデルグラフィクス 1月号 大日本絵画

Written By: 川俣 晶連絡先

 この号の感想は以下の記事に尽きます。

ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館「おたく:人格=空間=都市」総括

 p124に、「森川の著書『趣都の誕生 萌える都市秋葉原』を読んでもらえれば話は早いのだが」と書かれていますが、読んでいます。(私の感想)。その印象からすると、うーん、どうだろうなぁ。とても微妙で肯定しがたい部分が残る感じです。

 p129に、『海洋堂の宮脇から「村上隆と岡田斗司夫と森川嘉一郎が勢揃いしとるで~! ゴジラとモスラとキングギドラの揃い踏みみたいでこれは大変なことじゃ~!」という、何が大変なんだかさっぱり分からないけれどまあ大変なんだろうなあという呼び出しが入り』という文章が出てきます。いや、これは大変なことでしょう。オタクと有自覚的に辺境領域で向き合う大物が3人という感じです。私ですら、大変な顔揃えだと感じます。

 しかし、最も興味深いのはp130~p131に出てくる4人の評価の食い違いです。以下敬称略で行きますが。ここで、ひたすらこの日本館を褒めているのは岡田斗司夫だけ。しかし、それがどこまで本気かは分かりません。いくらでも演技のできる芸人としての側面があると思うからです。

 村上隆は褒めているように見せかけながら実はかなり否定的に評価していますね。

 そして、斎藤環は、褒めているように見せかけることなく否定的な評価を書いています。そして、おそらくは森川嘉一郎の意図と違う形で、その価値を肯定的に認識していることを述べています。

 本文を書いているあさのまさひこは、ずっと疑問を抱き続けたことを書き、最後に真意を知って「おっとこ前じゃん」と彼の心意気を褒めています。しかし、心意気は褒めているけれど、イベントして正しかったとは言っていません。言ってみれば、イベントの評価と心意気の問題をすり替えています。

 つまり、これらを通して、本当に成功したかどうか非常に危うい結果であった、というニュアンスが受け取れました。それにも関わらず、そこに何かしら語るべきことを持っていて、それを語っているところが非常に興味深いところです。おそらくは、イベントとしての成功よりも、そちらの方が大きな意味を持つのでしょう。