2005年03月23日
トーノZEROアニメ感想巌窟王 total 11679 count

ジェンダーの曖昧さに訣別し、エデを助ける態度も男らしいアルベール!?

Written By: トーノZERO連絡先

 謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!

 今日の巌窟王の感想。

サブタイトル §

第二十三幕

エドモン・ダンテス

あらすじ §

 モンテ・クリスト伯爵の地下の庭で、フェルナンと伯爵の戦いが起こります。

 最初は甲冑で。

 そして、甲冑から出て生身で向き合います。

 その場に、伯爵を気遣うエデや、負傷したアルベールが駆けつけます。

 エデは復讐を中止するように伯爵を説得しますが、失敗します。

 フェルナンはエデを人質に取ります。

 一方、伯爵の部下は、アルベールを人質にします。

 伯爵は、復讐を完遂するためにアルベールを撃とうとします。

 フェルナンは本心からアルベールを助けてくれと嘆願します。

 伯爵の銃弾は、伯爵の部下がかばい、アルベールには当たりません。

 アルベールは、伯爵を抱きしめ、キスをします。

 伯爵は、エドモンの姿に戻り、そして自分の名前を言い残して死を迎えます。

 地下の庭園は崩壊を始めます。

 伯爵と運命を共にするつもりのエデを、アルベールは連れて逃げます。

 フェルナンは逃げずに残ります。

感想 §

 面白い。

 面白いですよ。

 登場人物それぞれにドラマがありますが、あえてここでは「男になるアルベール」という話について語りたいと思います。

 それこそが、もっとも印象的で興味深いと感じたからです。

 アルベールというキャラクターは、当然男の子です。しかし、伯爵という圧倒的な大人の男性の魅力に巻き込まれ、むしろ女の子のように伯爵を見上げる面が無かったとは言えません。そして、婚約者のユージェニーとの複雑なやり取りから、自らが男であるという強い自覚も発生しています。

 つまりは、アルベールというキャラクターはジェンダー(性的な役割)が揺れ動いて曖昧な男の子である見ることができます。

 そのことは、たとえば、ユージェニーの結婚の場に女装して入り込むような形で、間接的にも描かれていたと言えます。

 そして、今回、アルベールは伯爵を抱きしめ、そしてキスまでしたかのように見えます。あれはキスに見えましたが違うのかな? まあ確実ではありませんが良いでしょう。

 つまり、この時点で、アルベールは伯爵に対して完全なる女性的なジェンダーを示したことになります。これは、かなり衝撃的です。というのは、アルベールというキャラクターがこれまで指向してきた方向性の多くを否定することになるからです。アルベールは、男であることを選び取っていかねば生きる道はない、というぐらいに男性を指向していたはずです。それにも関わらず、ここで完全なる女性性を示すとはいったいどういうことか!!

 ところが、その後のアルベールの行動は、完全なまでに男性的なジェンダーを発揮します。つまりは、負傷した身でありながら、か弱い姫であるエデを抱えて走ります。このシーンは、完全に絵になります。アルベールは、これ以上にどうしようもないぐらいに完全なる男として、女性をいたわるというジェンダー性を発揮しています。そして、もちろエデは完全なる女性的、お姫様的ジェンダーを発揮し、王子様的な態度を発揮するアルベールに身をゆだねます。

 つまり、アルベールは、ジェンダー的に曖昧な態度を捨てて、自ら男性であることを完全に選び取ったことになります。

 そこから考えれば、伯爵に向けた徹底的に女性的な態度こそ、自らの女性性に訣別する儀式であり、その儀式の効能を高めるためにこそ、徹底的に女性的であらねばならなかったことになります。

 それに加えて、伯爵の死は、アルベールを縛ったジェンダー的な呪縛からの解放を意味したのでしょう。

 まあ理屈はともかく、エデを抱えて走るアルベールは凄く格好良いし、絵になったと思います。

更に感想 §

 巌窟王が語りかけるシーンはなかなか良いですね。

 特に、友の心が分からぬおまえには救えないという巌窟王は、非常に奥深いです。

懸念 §

 あれ?

 おかしいな。

 公式サイトでは、第二十四幕 「渚にて」が最終回とされていますが、今回は次回予告がありません。しかし、公式サイトには、放映予定があります。

 放送してくれると良いのですが……。

今回の名台詞 §

フェルナン「悪夢よ、消えよ」

 彼から見れば伯爵は悪夢そのものなのでしょう。何より、自分の後ろめたい行為によって引き起こされたことであるがゆえに。