2005年03月25日
川俣晶の縁側過去形 本の虫感想編 total 2437 count

人形作家 四谷シモン 講談社

Written By: 川俣 晶連絡先

 アーティストはその生き様こそが面白い、という主張を肯定するような内容の本でした。

 アングラ劇団で俳優も務めたことがある人形作家の人生は、それ自体が1つのドラマと言えますね。

 特に良かったのが、子供時代に、理不尽に殴られてどうしようもない世間のしくみがあると悟るところです。そして、今に見ていろと頑張るわけですね。

 たぶん、これは人間が成長するための1つの必要とされる段階のようなもので、子供には理不尽に殴られる経験(別に暴力でなくても良いが)を得る権利があり、そして大人にはそのような経験を与える義務があるような気がします。そして、もちろん、理不尽にいたぶるだけではダメで、子供には努力して勝ち取るべき未来を与えねばなりません。つまり、今に見ていろと努力することで、相手を見返せるような可能性ですね。

 そういう意味で、子供に対して(精神的な子供は何歳であろうと子供に分類)、大人はそのようなものを与える義務があって、子供を大切にすると言う大義名分と引き換えて、それらを与える手間を手抜きすることは社会の崩壊を招く極悪な反社会的行為ではなかろうかと。

 ええ、だから時として、私も理不尽に年少者に不快感を与えるような文章を書くケースがあるわけです。