2005年05月08日
川俣晶の縁側過去形 本の虫感想編 total 2777 count

こち亀千両箱 秋本治 集英社

Written By: 川俣 晶連絡先

 ある意味、「両さんと歩く下町―『こち亀』の扉絵で綴る東京情景」を補完するような本と思いますが、それはさておき、泣ける良い話ばかり集まった良い本です。

 通常、こち亀はドタバタがメインなのですが、たまに非常に渋くて泣かせる話が入ってきて、まさにそれの集大成という感じの本だと思います。

 単行本を保存する必要性はない(というより量の問題から保存できない)としても、これだけはずっと本棚に入れておく価値がありそうです。

古都の走馬燈 §

 どれも良い話ですが、特に好きなのは「古都の走馬燈」ですね。

 自転車で京都に行く子供達というのも凄いですが、両さんも一人前の大人として京都まで初恋の相手に会いに行く、という情景も凄く良いですね。

 つまり、いつも金に目の色を変えてドタバタを繰り返す両さんにも、こういう隠れた一面があると言うことですね。誰にも知られない特別な世界。もちろん、両さんはそれに値するだけの男であるわけです。それは、見る目のある幾人かの女性達によって認められていることではありますが、両さん自身がそれをストレートに受け入れることに照れがあるように感じられます。つまりは、照れ抜きで本当に良い女性と向き合うことができる希有なシチュエーションと言うことです。