2005年08月19日
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So What? 4~6 わかつきめぐみ 白泉社

Written By: 川俣 晶連絡先

 これは、感想の前編からの続きです。これだけ読んでも意味が分からないと思うので、お手数ですが前編から読んでください。

驚きの結論はどこに行った? §

 いや、盛大に盛り上げておいて何ですが。

 驚きの結論であるとか、真の結論と呼ぶに値するものはありません。

 結局のところ、私にはこの作品を的確に把握することは、おそらくできないだろうと気付いたからです。

 この作品には、確かに何らかの魅力があります。

 しかし、その魅力は、私に対してまっすぐに突き刺さってきません。おそらく、この作品が描かれ、受け入れられていた時代性の違いではないかという気がします。その当時の「時代」にどっぷり浸かっていれば、おそらくは魅力がまっすぐに刺さってきたのでしょう。しかし、既に別の時代を生きる私は違うポジションに立っていて、魅力を正しく受け止めることができないのでしょう。

 そういう意味で、暗黙的なバックグラウンドを共有しない相手には受容しにくいという構造的欠陥を持つ作品であるという評価を下すことはできるかもしれません。しかし、そのような欠陥は、大なり小なりどの作品も抱えているものであって、それをもって致命的な欠陥と言うほどでもないと思います。

「わかつきめぐみ」の価値 §

 別の言葉で言い換えれば、なぜ「わかつきめぐみ」という漫画家デビューでき、読者によって支持されたのかを考えていくときに、極めてピュアに時代性にシンクロしていたから、という理由が考えられます。理屈や知識やテクニックによって誤魔化し得ない、時代に対する純粋な感受性と、それに対して筋を通しうるだけの構成力を併せ持っていることが、「わかつきめぐみ」の価値なのかもしれません。

 しかし、それが「わかつきめぐみ」の価値だとしても、同時に弱点となりうるポイントであり、非常に悩ましい問題という感じもあります。