2005年10月02日
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働きマン 1 安野モヨコ 講談社

Written By: 川俣 晶連絡先

 まだ読んでいない本が山ほどあるので、本を買うことはないと思っていました。

 しかし、買い物には、それ自身に(つまり金を出して品物を受け取る行為に)癒しの効果があるという話を思い出して、癒されるために買ってみました。

 もちろん、金はないから安いものをね。いきなり高価なものを買ったりはしないわけです。コミックなんていうのは、「無視できない金額が消えた」という気持ちを持ちながら、しかし実際にはあまり痛くない微妙な良い金額にあたります。

 それはさておき、どうして「働きマン」なのかというと、下高井戸の啓文堂ではずっと目立つところに置かれていて気になったのと、この奇妙きてれつな表紙があまりに印象深すぎるためです。

 何しろ、この表紙。仕事バリバリでお洒落なところもある若い女性であるにも関わらず、明らかに変過ぎるポーズを取っています。(私にとって)分かりやすく要約すれば、エメリウム光線を撃とうとしているかのように見えるということです。

 もちろん、そんな特撮を意識した表紙など描くはずもないだろう、という常識で忘れ去ることも不可能ではありません。

 ですが、この安野モヨコという人は、庵野監督との結婚生活を描いた監督不行届で自信もオタクであることを露呈しているばかりか、安野モヨコ原作のアニメ「シュガシュガルーン」は「魔女っ子メグちゃん」を意識しているとしか思えないし。

 いったい何か意味があるのだろうか、という疑問がぬぐえません。

 というわけで、買ってみました。

 こ、これは……。

 仕事をする現代の若い女性とその周辺の者達のドラマです。

 しかし、そこに微妙に入り込んでくるオタク的感性。

 腕を上に突き上げてウルトラマンの変身ポーズのように「働きマン」を宣言する主人公。

 しかも、なぜか「通常の三倍」の仕事が出来ます。二倍でも四倍でもなく、きっちり三倍です。

 更に、明らかにオタク的な風貌の編集者が登場するエピソードまであり、しかも彼は鮮やかに編集部の危機的状況を救います。

 また、背表紙の持ち物をずらっと並べて描くのは、やはり大図解的なオタク的な表現手法であると言っても良いよいに思います。

 というわけで、けっこう面白かったと思います。

 いや、オタク的描写がというわけではなく、人間の隠された面がコロッと出てくるようなドラマの積み重ねが面白いという意味ですが。