2005年10月09日
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解説『スターシステム』 これぞ舞-HiMEプロジェクトを理解するための必須キーワード!?

Written By: トーノZERO連絡先

 お節介な親切心(老婆心)でしかありませんが、『スターシステム』という言葉の意味を説明しなければならないシチュエーションが今後とも発生しそうなので解説を書いておきます。

 まず、舞-HiMEプロジェクト、つまり舞-HiMEと舞-乙HiMEは、『スターシステム』を採用しているという事実を確認しましょう。

 それは、以下のページを参照すると明らかになります。

舞-乙HiME公式サイト学園長挨拶

サンライズが満を持して放つ舞-HiMEプロジェクト第2弾『舞-乙HiME(マイオトメ)』がいよいよ開幕! キャラクタースターシステムによって前作『舞-HiME』のキャラも続々登場するというから、『舞-HiME』ファンは絶対見逃せないぞ!

(強調筆者)

 スターシステムという言葉にキャラクターという言葉を冠している理由については、あとで触れます。

スターシステムとは何か? §

 ここでいうスターシステムとは、私なりに解釈すれば、主に古典的なコミックの世界に見られるもので、同じキャラクター達が異なる作品に、異なる役柄で登場するシステムを意味します。

 私が最初に出会ったスターシステムは、おそらく赤塚不二夫の名作ギャグマンガ、「おそ松くん」です。TVアニメに(おそらく)2回なっているので、比較的有名だと思います。

 私の「おそ松くん」初体験は、おそらくアニメです。まだ幼い頃に、モノクロのアニメ(最初からモノクロなのか、それとも見たテレビがモノクロだっただけかは不詳)を見た記憶があります。

 おそ松くんとは、同じ顔の六ツ子が主役となるシュールな日常ドラマです。同一人物だと思って接していると、実は別人が6人もいてびっくり、というのが基本的なコンセプトでしょう。また、おそ松くんには、フランス帰りを自称する出っ歯のイヤミ(シェーのポーズが有名)や、おでんが好きなチビ太などの魅力的な脇役が登場します。

 さて、それからかなりの時間が経過して。

 どういう経緯か、たまたま私のところにおそ松くんのコミックスの単行本が1冊だけ舞い込んできました。

 しかし、中を見ると、どうもおかしいのです。

 確かに、おそ松くんの登場人物が活躍する漫画が収録されています。

 ところが、それはマフィアの話であったり、時代劇であったりするのです。つまり、シュールな日常ドラマでないどころか、1冊の中で作品世界が一貫していないのです。

 更に驚くべきことは、主役が違うところです。時代劇の話では、本来脇役であるはずのイヤミが主人公であり、しかもイヤミの役柄はフランス帰りの嫌味な奴ではなく、顔は不細工でも心は善良な浪人なのです。

 では、それが世界観の一貫性を放棄したつまらない作品かというと、そうでもないのです。読んでみれば、どれも良い人情話です。

 つまり、同じキャラクターが、別の作品の別のキャラクターを演じることは、やり方次第では可能であり、それは十分に面白いと言えます。これがスターシステムです。

 特に、イヤミの件で言えば、イヤミというキャラクターの持つイメージと固有の作品で与えられた役柄のギャップが、読む者に大きな印象を残す、という点は注目に値します。つまり、作品固有の新しいキャラクターを作っていては生み出せない「持ち味」を獲得する手段として、スターシステムを肯定する考え方は十分に可能でしょう。

スターシステムの歴史と現在 §

 スターシステムの元祖は手塚治虫であるようです。

 その後、多くの漫画家によって用いられたようで、おそ松くんの例はその1つに過ぎません。

 しかし、最近ではあまり見られない手法であるように思えます。

 アニメの方に目を転じると、原作となるコミックスで用いられない手法であるためか、あまりアニメでも見られない手法となっているように思います。

 ところが、最近になって、実は突如としてアニメの世界ではスターシステムの復活という潮流が発生しています。

事例1 ブラックジャック §

 まず、スターシステムの元祖ともいうべき手塚治虫原作の「ブラックジャック」が、他の手塚作品のキャラクターを大々的に取り込むという手法を取っています。たとえば、ピノコの友達となる写楽は、本来「三つ目がとおる」という作品の主人公です(和登さんも)。どうやらブラックジャックの原作コミックにも写楽は出ているらしいのですが、おそらくこれほど大々的には出ていないだろうと推測します。

 しかし、手塚作品の洗礼を受けていない若い世代には、たとえ別作品のキャラクターが登場していても、それが「別作品の」キャラクターであるという実感は得にくいかもしれません。

事例2 ツバサ・クロニクル §

 若い世代にも実感しやすい事例もあります。

 それがツバサ・クロニクルです。ツバサ・クロニクルとは、人気漫画家グループのCLAMPのキャラクター達が、別の世界、別の役柄を与えられて活躍するコミックであり、それを原作としたアニメです。

 私の周囲のオタク達のリアクションを見る限り、この作品への評価は著しく低いようです。しかし、その理由は、「私の大好きなあのキャラクターが別の役柄になってしまったから」というスターシステムに起因するものというよりは、本来最も人気がある「木之本桜(サクラ)」を差し置いて、最も不評であった「小狼」を主役としたマーケティング上の不手際にあるように見えます。実はこの傾向は、この二人が登場する「カードキャプターさくら」の末期より出ていたものであり、おそらくは意識的に不評な路線を選択したものと推測します。しかし、不評の主たる理由は、スターシステムではないことが推測されます。

事例3 舞-乙HiME §

 つまり、これが3つめの事例ということになります。

 1つや2つなら偶然とも言えますが、3つも続けば何かの必然があるのでしょう。

余談: サクラ大戦 §

 アニメやゲームだけ見ていると分かりにくいのですが、サクラ大戦という一連の作品群の一部は、声優によって演じられる演劇となります。このとき、声優は単に役柄を演じているわけではなく、実はサクラ大戦のキャラクターが演劇をやっているという二重の虚構性を持ちます。これは、コミック的なスターシステムが生身の身体を通じて表現されている事例……、ということができるかもしれません。

その他のスターシステム §

 以下を読むと、ハリウッドなど、コミックとは違う世界のスターシステムについても多少の知識を得ることができるでしょう。(更に、ここで説明されていない、あるいはここの説明とは違う知識も)

 さて、コミックのスターシステムと異なるスターシステムが存在することから、それと明確に区別するためにネーミングを工夫する価値があるかもしれません。もしかしたら、舞-HiMEプロジェクトが、スターシステムの頭にキャラクターを冠してキャラクタースターシステムと呼称している理由はそれであるかもしれません。

演劇的な感覚で言えば §

 舞-乙HiMEの企画が「舞-HiME劇団第2回公演」と題されていたことが知られていますが、このような表現からは舞-HiMEプロジェクトのスターシステムには、演劇的な側面があることが推測されます。

 つまり、同じ役者が別の舞台に別の役で出演するのは当たり前のことであり、別の舞台では主役が変わることもあるし、前の舞台には出ていない新人が出ることもあるわけです。

 このように考えた場合、特に女の子ばかりが多いという特徴は、宝塚を連想させます。上記のWikiPediaの記述では、コミックのスターシステムの元祖たる手塚が宝塚の影響を受けているという記述と符合する点が注目されます。

 これは、日本漫画界の覚醒遺伝子の発現であるのか、それとも時代が一巡して原点回帰したことによる必然性であるのか、そのあたりの考察は地道に真面目な研究家に任せたいと思います。

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