結局、システムトラブルの再現テスト(えらく時間を食う)の結果待ちの間に、7割ぐらいを読んでしまいました。
さて、感想ですが……。
古い! §
ともかく内容が古くて大変。
懐かしさに涙が出ます。
パソコンの呼称はノートではなくラップトップ。
公衆電話から通信を行うときは音響カプラを使います。
このような作品が、どうして「この文庫がすごい! 2005年版第1位」に入ったのが、その理由は非常に気になるところです。つまり、レトロな味が理解された上でのことなのか、それとも理解されないでのことなのか、ということです。
犯人が明らか §
2つの誘拐事件のうち、第2の誘拐事件の犯人は準備中から明らかになっています。
第1の誘拐事件の犯人も途中で明らかになります。
それだけ明らかにしながら、最終的に第2の誘拐事件のトリックが最後まで分からないということになります。それを明らかにするのは、探偵ではなく、第1の誘拐事件の犯人です。
手の込んだ構成ですね。
もっとも、事件の謎が解ける爽快感はありませんが。
この結末は? §
この作品は、第1の誘拐事件の犯人と、第2の誘拐事件の犯人が、双方の犯行を知った上でフェリーの甲板に上がっていくところで終わります。さて二人が上がって何をするのでしょう? あえて書かれていないそのことが、非常に気になります。
どちらかが他方を海に突き落として殺す?
そのような展開も、無いとは言えないでしょう。
そうでなくても、おそらくは非常に緊張感のあるやりとりが交わされることになるでしょう。
その結果、何か致命的な出来事が起こることも考えられます。
おそらくは、この書かれなかった部分こそが、この作品の最大の見所ではないかと思いました。