2006年01月01日
トーノZEROアニメ感想蒼穹のファフナー total 6019 count

これは見事に独立した「作品」と呼ぶに値するTVスペシャル!?

Written By: トーノZERO連絡先

 謎のアニメ感想家(笑)、翼の騎士トーノZEROのアニメ感想行ってみよう!

 2005年12月30日(TV東京の表記では29日)放送の『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』の感想。

サブタイトル §

蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT

(TVスペシャル)

あらすじ §

 蒼穹のファフナー本編よりも前の時代。

 まだフェストゥムとの遭遇の準備ができていない竜宮島は、フェストゥムに発見されることを防ぐために、L計画を発動します。

 L計画は島の一部を切り離し、それを竜宮島と敵に誤認させるものでした。ファフナーと戦闘員達がその島に乗り込み、60日間戦い抜くというものでした。

 将陵僚と生駒祐未は、パイロットとしてそれに参加します。

 多くの犠牲を出しつつ、60日間を戦い抜きます

 彼らは潜水艦で島を脱出し、竜宮島に帰ろうとします。

 しかし、海中に入れなかった筈のフェストゥムが海中に姿を現し、潜水艦を沈めます。

 ファフナーで行動中だった将陵僚と生駒祐未は、竜宮島の位置をフェストゥムに知られないために、あえて島から離れます。

 皆城総士は、理屈を付け、この二人を助けるために蔵前果林のマークツヴァイを向かわせます。しかし、生駒祐未は同化現象で身体が結晶化し、将陵僚はフェストゥムを巻き込んで機体を自爆させます。

感想 §

 ファフナー本編よりも手前の時代に設定された時点で、最終的に主人公が死ぬしかないことを運命づけられた作品と言えます。

 とはいえ、その悲しい制約を別とすれば、実に素晴らしい恋愛の物語であり、生きる希望を信じ続ける物語だと言えます。

 全員が帰還することを前提として立案されたL計画。それは人間とは信じるに値するものであることを強く印象づけます。

 特に、死んでも意志が生き続ける生駒祐未の父親の存在感が素晴らしいですね。彼がいかなる人物であるかを、死んだ後で皆は手探りで探り当てます。そして、それは期待に違わないものでした。

更に感想 §

 実は、ファフナー本編の第1話で強い印象に残っているシーンがあります。

 それは、フェストゥム迎撃のために移動中の眼鏡の少女パイロットが、一撃で消滅してしまうシーンです。決意をして強い意志を持ってこれからファフナーに乗り込もうとしていたというのに、一撃で消滅してしまいます。

 この少女こそはこの作品で名脇役として重要な役割を持つ蔵前果林ですね。

 彼女が元気に動き回るドラマを見られたというのは、少しだけ良かったと思います。

映像的には…… §

 冒頭の空戦シーンは素晴らしいと思いました。

 動きに官能的な快楽の片鱗が見えます。(それが見られるアニメはけして多くはない)

今回の一言 §

 正直、見るのが恐かったというところがあります。

 ファフナー本編は非常に良い作品でしたが、まさに良い作品であったがために恐いという側面。それから、キャラの顔がみな同じに見えて区別できないのではないかという恐れ。

 しかし、実際に見てみると、独立した作品として鑑賞可能な優れた内容であり、ファフナー本編を詳しく覚えている必要が全くない非常にしっかりした構成でした。

 これはもう、「本物の作品だ」と言うのが適切でしょう。

 ファンサービスの人気キャラクター総出演的なスペシャルとは違います。

 これはファンサービスではなく「作品」です。

 (そして、「今時の萌えとはポルノである」という解釈を肯定するなら、「作品」であることを選び取ったこのスペシャルは、今時の萌えにどっぷり浸った視聴者へのアピール力を持たないことを意味します。良い作品を作っても報われない……かもしれないのは非常に悲しいことですね)