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2006年05月11日
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ゴースト・レイパー

Written By: 遠野秋彦連絡先

 宇宙モンスターに陵辱される美女。

 それは、20世紀の昔より、何回と無く繰り返し人類によって妄想されてきたモチーフと言える。

 通常、このモチーフは、美女を救出するヒロイズムを強調されるために使われる。奇っ怪なモンスターに襲われる美女は、間一髪でヒーローに救われてめでたしめでたしとなる。

 しかし、ここに性の問題が絡むと、話は単純に割り切れなくなる。醜悪なモンスターによる陵辱という可能性を提示しておきながら、必ずそれを見せないという展開は、「それを見たい」という隠された欲求を見る者に植え付けてしまう。

 また、あえて自ら不幸な境遇に身を投げ出したいと願うマゾヒズムという性的嗜好の存在を考えれば、少数派とはいえ、女性側にすら宇宙モンスターに陵辱されてみたいという欲求を引きおこすケースが存在するのである。

 しかし、このような欲求が現実世界で満たされることはあり得ない。その理由は、未知の宇宙モンスターの立場に立ってみれば分かる。宇宙モンスターから見れば、人間とは今まで見たこともない異星の生き物、未知の怪物でしかない。もしかしたら、美味しそうに見えるという理由で食料と誤認して襲う可能性はあるかもしれない。しかし、性的な行為は絶望的に不可能といえる。まず、人間の身体のどの箇所が性交のための器官であるかを判断しなければならない。それは女性にあっては両足の間という分かりにくい箇所にあるだけでなく、ほぼ間違いなく服によって隠されていて判別しにくい。仮にその場所を特定したとしても、適切な太さと長さを持った生殖器官が無ければ陵辱は成立しない。人類が存在しない天体で進化したモンスターに、そのような丁度良い形とサイズの生殖器官が備わっている必然性はまるで存在しない。

 それゆえに、異星に不時着して救出の遅れから命を落としたハート博士が残したテンタクル・ハート日記は、発見された瞬間から、妄想の産物扱いされた。

 ハート博士は、ベテルギウス-カノープス航路の恒星間客船ホメロス49の乗客だった。彼女は、ホメロス49の遭難時に脱出艇で飛び出し、当時まだカタログに登録されているだけで何ら調査が行われていなかった恒星系ミステリオンの第4惑星に不時着した。この遭難事故の原因は、生存者0名という事情も相まって、今に至っても良く分かっていない。少なくとも、ホメロス49がなぜか定期航路から大きく外れて航行していたことだけは確かである。航路が大きくずれたことにより、ハート博士の脱出艇が放つ救難シグナルに対応するのに余計な時間を要した。本来なら遅くとも1年以内に救助船が到着するはずが、3年の時間を要したのだ。その結果、脱出艇が常備している2年分の水と食料によってハート博士は命をつなぐことができなかった。その結果、発見時点で既にハート博士は白骨になっていた。

 しかし、ハート博士が残した日記は大きな波紋を投げかけた。

 27時間周期で繰り返されるこの惑星の昼と夜の夜の間だけ、モンスターがハート博士の寝所を襲い、陵辱し続けたというのだ。

 当初、ハート博士は危険を感じて抵抗したが、繰り返し陵辱されているうちに快楽に負けてモンスターを受け入れるようになる。更には、モンスターに妊娠させられ、出産まで経験してしまう。出産したモンスターの子は僅か数ヶ月で性交可能な状態に成長して、ハート博士は2体のモンスターに陵辱される日々を送る。

 しかし、この日記は、自分が生んだ「我が子」との交わる喜びを綴った後、唐突に終わる。日記帳のページが尽きたからだ。

 最後のページには、モンスターを夫と呼ぶという決意が書き記されていた。既に救助船が来るはずの時期はとっくに過ぎていたが、ここに来てハート博士は、待つことよりも残った時間をモンスターと生きることに捧げる決意をしたのだ。

 しかし、その決意には、ある種の喜びのニュアンスがにじみ出ていた。自分の女としての幸せはここにあった……とすら書かれているのだ。

 さて、この日記に対する最初の評価は「妄想」というものだった。

 人間と出会ったことがない未知のモンスターが、人間を毎夜陵辱するというだけでもあり得ない話なのに、子供ができたという話しなど夢想以外の何者でもない。地球上の生物であっても、特殊な例外を除いて、異種生物の混血は成立しない。父母の遺伝子が異なれば、それは受精しないのだ。人類と近い類縁関係のほ乳類との混血すらあり得ないのに、まして異星のモンスターとの混血児を受精することなどあり得ない。

 更に、ミステリオン第4惑星には標準規定レベルを2段階も超える詳細な調査が入ったにも関わらず、ハート博士が夫と見なしたとされるモンスターは発見できなかった。モンスターの存在どころか、その痕跡すら無かったのだ。

 そのことから考えれば、一人で未知の惑星に放り出されたハート博士が狂気に魅入られ、あり得ないモンスターに襲われたと思い込んでいただけ……という評価は全く妥当に思える。

 だが、その解釈に異を唱える者も出てきた。

 なぜなら、テンタクル・ハート日記に残されたハート博士の言葉は全く理性的だったからだ。ハート博士は、あり得ないことを明確にあり得ないと明言した上で、そこで起きている出来事を客観的に把握しようとしている。

 まず何より最初に行っているのが、陵辱行為が実在の出来事か空想上の出来事かの区別だった。これは、モンスターが残した体液を、サバイバルツールに含まれた簡易電子拡大鏡で調べることで決着を付けている。それは、明らかに精子に似た何かを含む液体で、ハート博士の身体から出るどのような液体とも似ていなかった。

 モンスターが実在することは疑いようもない。しかし、昼間にいくら周辺を捜索しても、モンスターは発見できなかった。

 それゆえに、ハート博士は、モンスターをゴースト・レイパーと名付けた。

 ゴースト・レイパーは、常識ではあり得ない存在であることは、ハート博士もよく承知していた。それを認めた上で、その特性をできるだけ客観的に調べ上げようとしていた。その苦闘の記録は全く理性的であり、狂気が入り込んでいるようには見えなかった。

 しかし、いくら調査してもゴースト・レイパーは発見できなかったのもまた事実である。

 最終的に、テンタクル・ハート日記とは、あまりに長い待ち時間に退屈したハート博士が、こんなモンスターがいたら退屈も紛れる……、という空想を記した小説である……という結論になった。

 更に、ゴースト・レイパーに酷似するモンスターが登場する小説を同人誌に発表したことがあることが明らかになると、この解釈は完全に証明された事実として認知された。

 その結果、テンタクル・ハート日記は小説として出版された。

 そして、これは大きな話題を呼び、多数の熱狂的男性ファンと、少数の女性ファンを得た。

 私は、ミステリオン第4惑星の荒涼たる大地に降り立った。

 人類が直接呼吸して問題ない大気であることは、第1次調査隊が確認しているが、一応は簡易防護服を着込んでいる。

 ここに立つことは、とても感慨が深い。

 なぜかといえば、テンタクル・ハート日記の熱狂的なファンであった私にとって、ここは聖地とも言うべき場所だったからだ。

 私がファンになった理由は複雑ではない。私とハート博士は似ていたからだ。つまり、大きすぎ、ゴツゴツし過ぎた身体を持つ女性ということだ。このような女性は、いかに異性に憧れようとも、それを満たされる可能性が著しく低い。ハート博士は、それゆえに学究によって尊敬を得る道を選んだと言える。私はといえば、危険な場所に体当たりで取材を行う突撃記者の仕事を選んだ。女性の取材が求められるが、危険すぎて名乗り出る女性記者がいないケースは珍しくもなく、私のような女にも仕事がある。

 もちろん、そこに満ち足りた性生活はない。

 だが、ハート博士は、モンスターを相手に、それを手に入れるというファンタジーを書き切った。

 それは、読みながら身を浸して興奮する可能性だった。女性の美醜など問題にしないモンスターは、小柄で、細身で、柔らかな肌を持った女性を選んだりはしないのだ。

 あり得ない空想と分かっていても、ハート博士の日記は、私のような女には極上の癒しとなったのだ。

 私生活では、テンタクル・ハート日記を体感できると称するバーチャルシミュレータを買い込んで、寂しい夜はそれを使って仮想上のモンスターとの性交によって自分を慰めた。もちろん、バーチャルではどれほどの美男であろうとも自由に相手を選ぶことができたが、それを選んでも癒しにならないことは自分でも良く分かっていた。

 そして、私はミステリオン星系第4次調査隊に同行取材というチャンスに飛びついた。ハート博士の夫となったモンスターが実在しないと分かっていても、その舞台となった土地は、自分の目で見ておきたかったのだ。

 私は、ほとんど記者の仕事を放り出し、一人で簡易ヘリコプターを飛ばして、テンタクル・ハート日記に登場する場所を巡った。

 その結果、テンタクル・ハート日記は驚くほどリアルな内容であることが分かった。たとえば、どこそこの場所で、岩を利用した特殊な体位で交わった……というような記述がされた場所には、確かにそのような岩が存在した。

 そういった事例を見ているうちに、私はテンタクル・ハート日記が、まるで事実を記録したドキュメンタリーに思えてきた。

 ある夜、私はハート博士がしばしばゴースト・レイパーとの性交に使った平滑で広い岩(石のベッドと書かれていた)の上に、簡易防護服を脱いで、たった一人で寝転がってみた。私は、今にもゴースト・レイパーの触手が絡み付いてきそうな錯覚を感じた。

 それは、私の中のある種の性的感覚を呼び起こした。

 どうせ誰も見ていないのだ……。

 私はそう思うと、そっと指を下着の下に這わせた。空想上のゴースト・レイパーが、私を襲う……。自分の世界に浸っていた私に、突然何かが覆い被さってきた。

 ハッと目を開くと、既に触手によって手足はがっちりと押さえ込まれていた。別の触手が、私の服の中に入り込んでくるとそのまま服の生地を引き裂いていく。

 どうして!

 ゴースト・レイパーは実在しなかったはずではないのか!

 撮影して証拠にしたい……、そう思ったが、ゴースト・レイパーはそれに応じてくれるほど紳士的な存在ではなかった。それは、テンタクル・ハート日記に書かれている通りだった。

 そして、バーチャルのゴースト・レイパーは、デザイナーが予想した以上にリアルだと言うことも分かった。目の前のモンスターは、バーチャルで見たそれと酷似している。

 夜明けまで続く陵辱行為がもたらす劇的な快楽の海に溺れつつ、1つだけ私は頭の中に引っかかることが残った。

 どうして「彼」はハート博士と自分の前にしか姿を見せないのだろうか……。それだけが小さなトゲのように私の心に残り続けた。

(遠野秋彦・作 ©2006 TOHNO, Akihiko)

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