2006年06月24日
トーノZEROアニメ感想シュガシュガルーン total 21675 count

この極めて優れたファンタジー的恋愛ドラマが終結・最初から全話感想を書いておけば良かったかな?

Written By: トーノZERO連絡先

 トーノZERO, THE BELKANアニメ感想家(笑)のアニメ感想を参ります。

 今日のシュガシュガルーンの感想。

サブタイトル §

最終話 「輝くハート! 次期女王決定」

あらすじ §

 グラースと対峙するショコラとバニラを助けに、ウーとソウルが来て戦います。

 しかし、全く勝てません。

 グラースは、ショコラとバニラのハートを強制的に奪おうとします。

 かつて、シナモンは、グラースを浄化しようとして失敗し、猫の姿にされたことが明らかになります。シナモンは身を挺してショコラとバニラを逃がします。

 ショコラは、ユニコーンのアドバイスをもとに、グラースとピエールの真実を見抜きます。グラースの中のピエールの心はまだ生きていました。ショコラは、自分のハートをピエールに渡してしまいます。ハートを手に入れたと思ったグラースは喜びますが、ショコラのハートはピエールを復活させます。そして、ピエールのハートを得たショコラも復活します。

 最後の試練、真実の愛を見届けたユニコーンは、自らの角=クリスタルハートをショコラに与えます。その力で、ショコラはグラースを浄化します。

 クイーン試験の結果が発表されます。角を使ってしまったショコラは、エクルの数で勝っていたバニラに負けたと判断され、バニラがクイーンになります。しかし、バニラは自らクイーンを辞退し、ショコラに王冠を渡します。

 クイーンになるための勉強を要求されたショコラは、まだしばらく人間界で学びたいと言い、認められます。

 シナモンは、人間の姿に戻ります。グラースは弱まっただけで、まだ滅んではいないにも関わらず、シナモンが人間に戻れたのはなぜか。その理由は、グラースの心境に変化があったのかもしれないと示唆されます。

感想 §

 この作品は、2つの意味でとてつもなく良かったと思います。

 第1に、作品そのものの内容がずば抜けて良かったこと。シナリオ的にも、テーマ的にも、ファッション的にも良かったと思います。これほど優れた作品は、そうそうあるものではありません。

 第2に、まさに私の趣味に合致すること。男と女の深く、大きく、長い恋愛ドラマはとても好きです。恋愛以外の要素はいろいろ入っていた方が楽しいですが、恋愛に関してはただひたすら、それだけを描いてくれれば満足です。むしろ、恋愛に絡む他の要素は無い方が良いとすら言えます。

 もっと分かりやすく言えば、セーラームーンで言えば、セーラーマーキュリーが登場する直前までの内容が好きだったという過去に示されます。なぜかといえば、セーラームーンとタキシード仮面が、二人だけの特別な時間を過ごすドラマだったからです。セーラームーンの孤独な戦いを知っているのはタキシード仮面だけであり、彼女を支え、彼に支えられる関係は特別なのです。その甘さは、特に優れた大きなものです。しかし、その甘いムードは、「一緒に戦うセーラー戦士の仲間」の出現によって致命的に葬り去られます。

 別の言い方をすれば、怪盗セイント・テールが好きなのは、それが徹底的にセイント・テールとアスカJr.の二人の追いかけっこのドラマが繰り返されるためだと言えます。二人の関係は特別であり、そこに余人が入り込む余地はありません。そして、間違いなくセイント・テールこと羽丘芽美はアスカJr.を愛しており、アスカJr.はセイント・テールを愛しています。甘い空間がそこに生じないわけがありません。しかし、同じように盗みに入るドラマであるキャッツ・アイに、そのような甘い空間はありません。3人組で盗みに入る彼女らに、二人だけの甘い空間を発生させる力はありません。

 さて、それらと同じような意味で、ショコラとピエールが生み出す二人だけの特別な甘い空間は絶品です。バニラがオグルの側についた時期ですら、ショコラとピエールの関係は全く揺るぎません。バニラとピエールの関係は、恋愛と呼べる水準にまで進まないのです。それゆえに、ショコラとピエールの愛は絶対的なものと言え、二人に課せられる試練は恋の試練のような「あまっちょろい」ものではなく、異種族間に歴史的にわだかまる憎悪の問題となります。

 たとえていえば、バニラとピエールの関係は、ロミオとジュリエットに似ています。本来は愛し合ってはならない許されざる関係を乗り越え結ばれるドラマという意味では、基本構造が似ています。

 しかし、結末は悲劇にはなりません。愛によって問題を克服するという素敵な結末が用意されていました。

愛によって問題を克服する §

 ちなみに、「愛によって問題を克服する」というのは二重の意味があります。1つは、もちろんショコラとピエールがハートを交換することで事態を打開する行為。もう1つは、クイーンキャンディがあくまでオグルと戦わないという方針を貫いたことです。後者も非常に重要で、もしも多くのオグルを傷つけていたら、いかにショコラとピエールがハートを交換しようとも、ロワイヨームとオグルの対立は根深く残った可能性があります。そういう意味で、クイーンキャンディは大物と言えるかもしれません。

 一方、思わせぶりで名前が取りざたされていたシナモンの方が、さほどでもなかったかもしれません。結局、無謀な浄化に挑戦し、それに失敗して猫の姿になっていただけ……。

 更にいえば、キャンディの娘のバニラも大物と言えます。自分からクイーンの座をショコラに譲るとは、そうそうできるものではありません。さすが、クイーンキャンディの娘です。

ハートの交換・禁忌の遂行 §

 この作品で最も重要な意味を持つのはハートです。

 ハートは相手に出させるものであって、自分が出してはいけないとされます。魔女がハートが奪われると死んでしまうというのです。

 それにも関わらず、最終的にショコラは自分のハートをピエールに対して自発的に渡します。ピエールが自分のハートをショコラに渡さねば、ショコラは死んでいたのかもしれません。そこまでして愛する……という心が素晴らしいですね。

 ちなみに、魔女の世界での結婚とは、ハートの交換そのものだという風習は途中のエピソードで描かれていました。そう考えれば、彼らの行動は奇異なものではありません。しかし、それは双方が合意の上で儀式の中で行えばのことです。限界状況で、交換が成立するかどうかも分からない状況でハートを渡してしまうのは、やはり素晴らしい「愛」です。

今回の見所 §

 ショコラとピエールがキスする瞬間、ショコラがふっと視線を横にずらしてから目を閉じる描写が素晴らしい!

シリーズを通して良かったこと §

 アイキャッチが凄く良いですね。何パターンかバリエーションがありますが、どれも素晴らしい絵です。

 後期EDも素晴らしいですね。

 後期EDのすごさの前では霞んでしまいますが、前期EDもとても良かったと思います。

最後に §

 全話感想を書いておけば良かったかな……。

 そうすれば、私がこれほどシュガシュガルーンを好きであったということを、少しは世間に知らしめることができたかもしれません。