2006年07月15日
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日本沈没 第二部 小松左京 谷甲州 小学館

Written By: 川俣 晶連絡先

日本沈没への思い入れ §

 日本沈没というのは、複数の意味で思い入れのある作品と言えます。

 まず第1に最初に出版されたカッパノベルズ(だったと思う)の日本沈没(上下巻)は子供の頃に読み切った、初めての大人向けの大長編小説ではないかと思うこと。(たぶん、それより前に星新一のショートショートは読んでいるが、あれは長編ではない)

 そして、映画の日本沈没は、面白くなくなりつつあった日本特撮の世界にあって、珍しく面白い大人向けの特撮映画だったように感じられること。

 更に、TVシリーズの日本沈没は、乏しい曖昧な記憶で言えば、宇宙戦艦ヤマトとの同時代の作品であって、7時半にヤマトを見てから8時から日本沈没を見るのが定番コースであったこと。

 等々。

日本沈没の続きへの思い入れ §

 更に、これが印象深いのは、日本沈没は本来3部構成であって、日本沈没というドラマはそのうちに第1部に過ぎないという情報が、マニアを気取っている者達の間に驚くほど浸透していなかったという事実を思い知らされたからです。そのような情報はカッパノベルズの日本沈没に書いてあったことで、何らレアな情報ではありません。しかし、浸透していなかったのです。

 で、後で第3部が「果てしなき流れの果てに」なのだという話は聞きましたが、何となく手を出せずに読んでいませんでした。

 しかし、日本列島が消滅した後、故郷を失った日本人がどうするのよ……という最も凶悪かつ気になる第2部が書かれることはなかったわけです。

 とはいえ、それこそが、当時の私から見て、最も読みたかった部分ですね。

 ちなみに、DAICONの3か4で、司会者(岡田さんか武田さんか他の誰かかは分からない)が、クラッシャージョーとなんとかが沈没するの続編はSF界の2大タブーだというようなネタを言っていたような非常に曖昧な記憶がありますが、「なんとかが沈没」が「日本沈没」だと理解しない人だらけ……(SF大会なのに!)と愕然とした頃が「当時の私」の「当時」です。

谷甲州への思い入れ §

 谷甲州はけっこう好きな作家です。

 デビュー作のCB8越冬隊からかなり読んでいます。(確か、CB8越冬隊が載った頃の奇想天外を買っていたような気がします。)

 それはさておき、航空宇宙軍の作品も読んでいますが、どちらかといえば非SFの山岳小説の方が好きだと感じます。真面目に山岳小説を読むのは、谷甲州という作家抜きではあり得なかった事態だと思います。しかし、それがまた読むと面白いわけです。

 覇者の戦塵は、初期は良かったのですが、最近はちょっとイマイチな面も目に付くところがあって、谷甲州という作家の自分にとっての価値はペンディングにしている部分がありました。しかし、それでも特に気になる作家の一人であることは間違いありません。

 その人が、気になる日本沈没の続編を書く聞けば、心が平静ではいられません。

 特に、海外、特にアジア圏に日本人がいるという状況を描きうる作家という観点からはトップクラスの一人と言って良いでしょう。サージェント・グルカでの日本人の描写など、惚れ惚れするものがあります。(冷たく突き放した態度も含めて)

 それが、日本列島を失った日本人のドラマを描くというのですよ。

 凄い話です。

手にとって見た §

 しかし、思い入れは逆に恐れも産みます。

 これは、実際に手にとって見ないことには買うことができない……。

 そう思って、近所の本屋を見ても在庫無し。

 新宿まで行ったときに、小田急デパートの三省堂に上がってやっと現物を見ました。

 パラパラっと見て、最初の数ページを軽く流してみると、これは面白そう。

 そのまま、自著が2冊平積みで売っているのを確認した後、レジで即座に購入。

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