学校探偵・内山田教諭とスクールファイブ
Amazon.co.jp


小説・火星の地底世界バルシダー
Amazon.co.jp


火星の地底世界の古代王国【合本】
Amazon.co.jp


宇宙重巡洋艦高尾始末記: 辺境艦隊シリーズ合本
Amazon.co.jp


全艦出撃! 大宇宙の守護者: オルランド・スペース・シリーズ合本
Amazon.co.jp


青春小説 北区赤羽私立赤バニ学園: 制服はバニーガール女装
Amazon.co.jp


坂本龍馬対ゾンビ: Japanese Dawn of the Dead
Amazon.co.jp


彼の味方は動物達と月の姫
Amazon.co.jp


小説・宇宙機動遊撃艦隊: ラト姫物語・セラ姫物語合本
Amazon.co.jp


本土決戦1950: 無敵! 日本陸軍ジェット戦闘隊
Amazon.co.jp


魔女と勇者の秘密: 遠野秋彦ファンタジー小説合本
Amazon.co.jp


無敵合体ロボ軍団 ~遠野秋彦ロボット小説合本~
Amazon.co.jp

2006年08月17日
遠野秋彦の庵小説の洞total 2527 count

オルランドと「大文字の彼」

Written By: 遠野秋彦連絡先

 ここは地獄だ。

 ラボと言う名の地獄。

 乳白色の壁に囲まれた小部屋の並ぶ閉鎖空間。

 ベッド、テーブル、椅子、食事が出てくる穴、そして奥のドアの向こうはユニットバス……。このドアには等身大の鏡が貼り付けられている。

 私は、鏡の前に立って自分を見た。

 ラボに来たときは、まだ生娘で、身体も完全に成熟しきってはいなかった。女というよりは、まだ娘の領域にいた。まだ堅さが残る身体のラインや、膨らみきっていない乳房など、同じ都市国家の男達からは「あと少しで食べ頃……」という視線で見られる存在だった。あのころ、そのような視線で見られるのはとても悔しかった。自分もはやく、男達から誘われる一人前の女になりたかった。

 しかし、今こうして鏡の中に見える私は、成熟した女だ。ゆったりした部屋着を通してすら、男を悩殺する豊満な身体のラインが強く意識される。都市国家の道を歩けば、男達は放っておかないだろう。だが、このラボに男達はいない。いや、確かにラボの主である「大文字の彼」は男のように見えるし、事実として男らしいのだが、彼がラボの女達を欲しがることはない。彼はあくまで女達を実験体としてしか見ていないのだ。

 私は、首筋に指を当て、指を滑らせて特定のシンボルを描いた。

 すると、私の身体を包んでいた部屋着は細かく泡立ち、身体の皮膚に吸い込まれるように消え去った。

 娯楽と言える娯楽が存在しないこのラボで、唯一の愉しみと言えるのがこれだ。

 正式には何と呼ばれているのか分からないが、ラボ内では通称「泡」と呼ばれる万能衣服だった。どのような仕組みかは分からないが、通常は身体に隙間に格納され、色、素材、形状などを詳細に指示すればそのような衣服となって身体を覆う。どのような衣服であろうとも、それが正確にイメージできるなら、それを着ることができる。

 しかし、ラボ側から見た「泡」のメリットは、コマンド1つで簡単に衣服を消滅させることができることだろう。たった今、私がやったように、消すのは一瞬で終わる。

 私は自分の裸体を鏡の中に見た。

 この身体は今がまさに絶頂期だった。あの頃、都市国家で最も人気のあった女優にも負けていない、と思った。

 だが絶頂期とは、これから改善されることがない……という冷酷な未来を暗示させる言葉だった。老いさらばえたあと、ラボから解放されて都市国家に戻ったとしても、もう男達から誘われることはないだろう。もちろん、そのような考えに意味はない。ラボから都市国家に戻った神殿の生け贄娘は存在しないのだ。

 私はため息をついた。

 指を首筋に当ててコマンドを描くと、「泡」は即座に反応し、私の身体を包む衣服になった。今度は身体に密着し、露出度の高い水着状の衣服だった。

 都市国家では人前に出るために着る服としては、絶対に考えられないほど破廉恥なものだった。様々な世界から来た者達が交わるラボでは、ファッションもまた交換される。今では、このような衣服で人前に出ることが恥ずかしいとは思わなくなっていた。

 私は、自分の部屋のドアを開いた。私達実験体は、実験が無い時間、他の実験体を訪問することを禁止されていない。同じ境遇の仲良しの娘を訪問するために、私は通路を歩いた。

 角を曲がった瞬間に、通路の中央を塞ぐように青い服を着た娘を押し倒し、力ずくで陵辱中に怪物に出会った。周囲には、娘が運んでいたと思われる荷物が散乱している。

 怪物はウロコに覆われた身体を持ち、腕が4本あった。腕のうち2本で娘を床に押し付けつつ、残りの2本で豊満なバストを激しく揉み立てていた。下半身で何をしているのかはよく見えなかった。

 このような光景は珍しくない。最初に目撃したときには驚いてその場に座り込んで動けなくなってしまったが、それは遠い昔の話だ。

 この怪物はMなので、けして私を襲わない。少なくとも通路では。Mとは実験用の怪物のことで、モンスターの頭文字だとされる。

 そして、襲われている娘は、ブルーアンドロイドと呼ばれ、ラボ内の各種雑用を一手に引き受ける者達の一人だった。アンドロイドとは、魂を吹き込まれ、自分で動く人形だという。しかし、実際に見ている限り、人間そのものに見えた。一時は、私達実験体の間に、ブルーアンドロイドも人間なのだという噂が流れた。実験体として不的確とされると、ブルーアンドロイドに格下げされるのだというのだ。だが、私達は年を取るのに、ブルーアンドロイド達は年を取らない……という事実が分かり、その説は消え去った。

 ブルーアンドロイドのブルーとは青の意味だが、それは常に青い制服の着用を義務づけられていることに由来する。

 この青の制服はラボの中の者達が実験体とブルーアンドロイドの区別を付ける絶対的な基準になっていると言っても良い。

 特に、青の制服に頼るのは、M達だ。M達とは、女を犯すことに特化された様々なタイプのモンスターと言える。そして、私達実験体は、実験室に呼び出され、様々なMと、様々な形で交わることを要求される。しかし、それだけではMが持つ性欲が全て満たされるとは限らない。満たされない性欲を持つMは、通路に出て、ブルーアンドロイドを無制限に犯すことを許可されている。しかし、通路で実験体を犯すことは許可されていない。Mの中には、知能の低いものもいるので、両者を区別するための青い制服は非常に大きな価値があるのだ。

 しかし、逆に言えば、私達も青い制服を着て通路に出れば、Mに犯される可能性があることを意味する。しかも、この場合のMは一切の手加減をしないので、性欲発散のために相手を殺しかねないとすら言われる。それゆえに、ドン老から常に厳重注意されている。

 そうそう。このラボには、「大文字の彼」、実験体、M、ブルーアンドロイドの他に、ドン老というロボットがいる。ドン老は、「大文字の彼」の世話係にして助手のような存在であり、時には彼に苦言を呈することもある。私達の要望を聞いてくれることもあるが、全般的に見れば彼のための働く存在であって、彼の望みを逸脱するような要望が聞き入れられることはない。

 私は、ブルーアンドロイドとMの脇をすり抜け、その先のドアを開いた。

 「お邪魔するわよ」と私は言った。

 そこは私の妹分とも言える実験体の娘、リリーの部屋だった。

 「お姉様!」とリリーが声を上げた。

 「ああん、お姉様、今日はいちだんとセクシーで、もう見ただけでいっちゃいそうですわ」と声を上げたのは、リリー同様に私の妹分のナセナだった。

 二人の妹分は、私のセクシーな身体に見とれている。本当なら、この見事な身体とセクシーな衣服で男達を悩殺したところだが、このラボにいるのは、「大文字の彼」を除けば、実験体、怪物、ブルーアンドロイド、ロボットだけなのだ。「大文字の彼」が恋愛の対象にならないとすれば、同じ実験体相手に恋愛ごっこをするしかない。私は同性愛の趣味はないが、この身体に悩殺されたがっている妹分に身体を見せつけるのは嫌いではなかった。

 「今、お姉様を呼びに行こうと思っていたところなんですよ」とリリーが言った。

 「そうなんです。上手くやったんですよ!」とナセナも言った。

 「何をやったというの?」と私は首をかしげた。このラボでやれることは、そう多くはない。

 「新入りの生意気なアヤ、あれを捕まえたんです!」とリリーはちょっと興奮に顔を赤らめながら言った。今夜のリリーは、いつも以上に乱れそうだ……と私は思った。

 しかし、事態は私の予想を遙かに超えていた。

 「ほら見てください」とナセナが開いたユニットバスのドアの向こうに転がされていたのは、声が出ないように猿ぐつわを噛まされ、ロープで体じゅうを縛り上げられた全裸の女だった。

 私は即座に理解した。

 この女が、最近ラボに来た実験体、オルランドのアヤであることは間違いない。新入りということは、まだ「泡」の使い方を飲み込んでいないだろう。「泡」は皮膚上で指を滑らせてコマンドすると機能するが、本人以外がやっても機能する。そして、「泡」を猿ぐつわやロープに変化させるコマンドも可能だ。厳密に言えばそれらは衣服ではないが、「泡」はそのようなものにも形を変えてくれる。

 つまり、リリーとナセナは、上手いことを言ってアヤを部屋に連れ込み、隙を見てアヤの「泡」にコマンドしたのだ。それは、素人相手には難しいことはない。正真正銘のレズビアンであるこの二人の娘なら、真剣にアヤに迫って愛撫に見せかけてコマンドを入れたろう。そして、コマンドさえ通れば、そのままアヤは身動きが取れなくなる。つまり、自分で「泡」を解除することはできなくなるのだ。

 「よくやったわ」と私はニンマリ微笑んだ。

 アヤは、来て早々、彼やドン老からちやほやされすぎている。実験体のナンバーワンであった私の地位が脅かされている。しかも私はこのあと老いていく一方で先がないのだ。

 「ねえ、どうやっていじめる?」とナセナがサディスティックに目を輝かせながら言った。「やっぱり私達のおしっこ飲ませようか」

 リリーが言った。「鞭でビシバシに打っちゃおうよ。血まみれで死んじゃうまで。私、泡を鞭にするコマンド見つけたんだ」

 死なせてしまう……というのは悪い考えではなかった。なぜなら、このラボに来た娘の9割は数日以内に死ぬからだ。この異常な空間でMと交わることを強制されることに、たいていの娘は耐えられない。そして、自殺を選ぶか、狂気に逃避してどこか知らない場所で処分される。狂気に駆られて自分の身体を血まみれにしたあげく、自殺するというパターンも珍しくない。アヤを鞭で打ち殺して自殺だとドン老に申告すれば、きっと通るだろう。

 だが、それは私の好みではなかった。

 私は、さっき通路で目撃した出来事を思い出して言った。「それよりもね。緊縛状態のまま残りの泡を青い制服に変えて通路に放り出すってのはどうかしら?」

 「えっ」「そんなことをしたら」とリリーとナセナが声を上げた。

 「あら。あなたたち、そういうのは嫌いかしら?」

 二人は首を大きく横に振った。

 「でも、青い制服のコマンドなんて知らないし……」とリリーが言った。

 「それなら私が知っているわ」と私は微笑んで見せた。かつて、部屋の中で何回も試行錯誤して割り出したのだ。だが、Mに犯されながら死ぬ自殺願望を満たすための作業だったことは二人に告げる気はなかった。

 準備が全て整い、青い制服を着て身動きできないよう縛られたアヤを通路に放り出す瞬間、私はアヤの強い視線を目が合ってしまった。

 その瞬間、私は気付いてしまった。

 アヤは、彼やドン老のお気に入りになってしまっただけではない。実は私もアヤを気に入ってしまったのだ。勇気がないために私が果たせなかった自殺方法を、アヤならば見事にやり遂げてくれるのではないか……。そんな憧れをアヤに託してしまったのだ。

 「キミ、素晴らしいよ。予想以上だ」といきなり背後で男の声がした。

 私はハッと振り返った。

 そこには、滅多に顔を見せない「大文字の彼」が立っていた。

 「おっと。声を立てないで。キミ以外にボクの姿は見えないようになっているからね。それにしても、さすがはオルランドのアヤだ。見たかい、あの表情。無制限に怪物に犯されることへの恐れと期待が入り交じったあの顔。ボクはアヤからあの表情を引き出すことができなかったが、キミにはできた。ボクはキミにとても感謝しているよ。でも、ボクに褒められたことは絶対に口外しないように。ああ、そうそう。アヤはオルランドのハイプだから、あの程度で死ぬことはないよ」

 次の瞬間、彼の姿はそこには無かった。

(遠野秋彦・作 ©2006 TOHNO, Akihiko)

★★ 遠野秋彦の長編小説はここで買えます。

Facebook

遠野秋彦

キーワード【 遠野秋彦の庵小説の洞
【小説の洞】の次のコンテンツ
2006年
08月
31日
オルランドと裏切り者クタラ
3days 0 count
total 3072 count
【小説の洞】の前のコンテンツ
2006年
08月
03日
オルランドと第2のオルランド
3days 0 count
total 2706 count


学校探偵・内山田教諭とスクールファイブ
Amazon.co.jp


小説・火星の地底世界バルシダー
Amazon.co.jp


火星の地底世界の古代王国【合本】
Amazon.co.jp


宇宙重巡洋艦高尾始末記: 辺境艦隊シリーズ合本
Amazon.co.jp


全艦出撃! 大宇宙の守護者: オルランド・スペース・シリーズ合本
Amazon.co.jp


青春小説 北区赤羽私立赤バニ学園: 制服はバニーガール女装
Amazon.co.jp


坂本龍馬対ゾンビ: Japanese Dawn of the Dead
Amazon.co.jp


彼の味方は動物達と月の姫
Amazon.co.jp


小説・宇宙機動遊撃艦隊: ラト姫物語・セラ姫物語合本
Amazon.co.jp


本土決戦1950: 無敵! 日本陸軍ジェット戦闘隊
Amazon.co.jp


魔女と勇者の秘密: 遠野秋彦ファンタジー小説合本
Amazon.co.jp


無敵合体ロボ軍団 ~遠野秋彦ロボット小説合本~
Amazon.co.jp

このコンテンツを書いた遠野秋彦へメッセージを送る

[メッセージ送信フォームを利用する]

メッセージ送信フォームを利用することで、遠野秋彦に対してメッセージを送ることができます。

この機能は、100%確実に遠野秋彦へメッセージを伝達するものではなく、また、確実に遠野秋彦よりの返事を得られるものではないことにご注意ください。

このコンテンツへトラックバックするためのURL

http://mag.autumn.org/tb.aspx/20060817154837
サイトの表紙【小説の洞】の表紙【小説の洞】のコンテンツ全リスト 【小説の洞】の入手全リスト 【小説の洞】のRSS1.0形式の情報このサイトの全キーワードリスト 印刷用ページ

管理者: 遠野秋彦連絡先

Powered by MagSite2 Version 0.36 (Alpha-Test) Copyright (c) 2004-2021 Pie Dey.Co.,Ltd.