うーん、これは参った。
表紙のオーラに引かれて買っただけの価値はある感じですね。
収録作品は、ビッグコミックオリジナルに、ほぼ1年に1本ずつ描かれたものです。
最初の作品が1998年で最新作が2006年です。
それゆえに、最初と最後ではかなりムードが違います。
最初のうちは、まだ煮え切らない感があったり、ぬるい感があったりするのですが、読み進む内に凄い世界に入り込んでいきます。
子供向け(中高生は十分に子供です)のコミックばかり描いていると心の中にわだかまってくる何かをぶつけたような感じでしょうか。なかなか出せないものを出すので、熱気が違います。
特に、ハッピーエンドで終わりそうに見せながらダークな展開を暗示して終わる第6話「時の階段」と、過去の夢をぶち壊す事実を目撃しつつも予想外のハッピーエンドを勝ち取る第7話「スケッチブック」は絶品。
人間のダークな側面から目をそらさず、しかし人間にむける暖かい眼差しが途切れることはない……という感じでしょうか。
時間を飛び越える不思議さも、自然に物語に織り込まれていて、理屈抜きで説得させられてしまいます。
鉄道模型 §
第3話に出てくる鉄道模型の描写が秀逸ですね。
グリーンマックスのキットを組み立てているムードがきちんと出ています。工具やパーツもきちんと描いてあるし。
ふと描かれているEF58+20系ブルートレインも、選択が渋いし。
実はそれだけでなく、62ページの実車の台車もそれらしくよく描けていると思います。
面白いですね。