無線通信の世界では、電波が届く経路が1つとは限りません。
それを証明しているのが、テレビに見られるゴーストという現象です。画像がだぶって2つに見えるという現象は、距離の違う2つの経路から電波が届いていることで発生する現象です。
しかし、送信アンテナは1つ、受信アンテナは1つなのに、どうして距離の違う2つの経路があるのでしょうか?
その理由は、「電波とは反射する存在である」という事実によります。たとえば、高いビルに反射して飛んでくる電波があるとすれば、直接飛んでくる電波よりも長い距離を飛ぶため、僅かに遅れて到着することになります。
しかし、通常はそれによって発生する遅れは僅かなものであり、1秒間に30枚もの画像を送るテレビだから明瞭に見ることができるものです。単純な音声通信の世界では、エコーが掛かったかのように聞こえるのがせいぜいでしょう。
ですが、それはあくまで地球上の話。
別の物理法則が支配するACE COMBAT世界では話が違うかもしれません。
もしも、別経路の電波が1秒程度の遅れで届く世界であったとしたら……。
真説・MISSION 25『ハートブレイク・ワン』 §
ジュネット「その直後にバートレットから3度目の暗号文が届いた。今度のものには緯度も経度もなくある時刻と無線の周波数だけが示されていた」
ジュネット「その時刻。みんながスピーカの前に集った」
グリム「でも、本当にバートレット大尉からの連絡でしょうか。何かのイタズラという可能性はありませんか?」
ナガセ「敵の謀略という可能性もあり得るわね」
スノー「もしそうなら、まさに詐欺だな」
そして、時間になる。
バートレット経路1「俺だ!」
バートレット経路2「俺だ!」
グリム「えええっっ。『俺だ俺だ』って、オレオレ詐欺ですか!」
すぐに落胆したナガセ大尉がスイッチを切った。
ナガセ「がっかりね」
バートレットは語り続けていたが、それを聞く者はいなかった……。