2007年03月09日
川俣晶の縁側過去形 本の虫感想編 total 3222 count

逆襲!パッパラ隊 1 松沢夏樹 一迅社

Written By: 川俣 晶連絡先

 うーん、一読して「面白い」。

 ギャグのテンションも、キャラの魅力も、ビジュアルの魅力も全く衰えていません。

 シュールなギャグが続発するにもかかわらず、作品の骨格の筋が1本通っているので、全体として1つの流れができています。

 しかも長所は1つではありません。

 どこから切ってもいい!

 あえて第1印象で三つ書くなら。

メカ §

 メカのデザインセンスの秀逸性が光ります。特に女の子の身体と一体になったデザインの秀逸性は、特筆すべきものでしょう。三姉妹のメカも良いですが、MISSION 05の扉絵の水中服(?)のスクリュー部分も印象的です。

反乱軍三姉妹の長女「りく」 §

 ある意味で、本作品のメインヒロインでしょうね。

 リーダーらしい風格と、どこか常識が欠落した天然っぽさが同居しています。

 印象的で強い魅力があります。

 ……と思ったら後半、アイドル歌手になりたかったという驚きの真相が明らかになり、どんどん暴走していく面白いキャラに。

自分を追い出した妹を守る王子 §

 この1巻のストーリーは、一言で言えば、妹に追い出されて国を乗っ取られた王子が、妹のピンチを救ってしまう……というものでしょう。

 この構成が、何よりも雄弁に作品の本質を語りきっています。

 強大な軍隊や反乱軍といった真面目な存在を媒介しつつ、戦いの本質は屈折した兄妹の愛情表現でしかないわけです。ストレートに好きと言えない、言うだけでは到底納得できない心理を描く作品であり、その屈折に到達する手段としてシュールなギャグが不可欠な作品なのでしょう。

 見事な心理ドラマです。

 ……さて、仕事が終わったらもう1回じっくり読もう。