2007年05月13日
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吊掛讃歌 1―イラストで綴る、古き佳き時代を駆け抜けた電車たち (1) 片野正巳 ネコ・パブリッシング

Written By: 川俣 晶連絡先

 京王……といえば、「5000系はいいですね!」などと言われたりしますが、実は個人的に5000系は京王車両の中で特に好きな車両とは言えなかったりするので、返事に困ったりします。

 あるいは、「2000系(あるいはグリーン電車)」について語ったりする人もいますが、ここでいう2000系というのは緑色に塗られていた湘南型の全車両であって、2010系や2700系を含んでいたりします。更に、グリーン電車という言い方は不適切で、白に赤帯の5000系と同じ塗色で走っていたことを配慮すれば不適切な言い方だし、そもそも、京王のグリーンが「驚くほど白っぽい緑」であって、東急等の緑とは違うという認識も無かったりします。こういう人に対して、うかつに「良いですね」などというと、思いも寄らないことに同意したことにされて後で苦労します。

 さて、この吊掛讃歌 1ですが、ひたすら京王と井の頭の箇所だけ見ました。他は見ていません。

 その結果、これは私にとって「非常に良いもの」だということが分かりました。

 京王の車両、歴史を振り返る際、実は最も知りたいのに良く分からないのが2700系までの世界です。それ以後の世界は、割と丁寧に説明された資料が多いのですが、戦前、戦中を経て、戦後のごたごたした時代を通して、どのような旧型車両が新宿の甲州街道の路上を走っていたのか……というのが良く分かりません。たとえば、昭和20~30年代の新宿の写真には、路上を走る旧型車両の5両編成が写っていたりしますが、それらの素性の詳細が良く分かりません。

 しかし、この本はそれにすっきりといた説明を付けてくれています。

 しかも色付きです。

 実に素晴らしい!

 ちなみに、私がもっと良いと思う京王の車両は2600系でしたが、最近9000系、特に9030系の都営新宿線直通急行(列車種別表示の緑の表示がデザイン上重要なので、これに限るのだ!)が良いと思うようになってきました。

 なので、2600系がヒーローのように目立つ本書は、そういう意味でも素晴らしい本ですね!