2007年08月04日
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マナフィを起点に考える・サトシの真になりたいのはポケモンマスターではなく「父親」だという仮説!!

Written By: トーノZERO連絡先

 「劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション ポケモンレンジャーと蒼海の王子 マナフィ」は、非常に気に入った映画です。

 この映画では、サトシとハルカが、マナフィを子として、まるで夫婦のように行動する姿が描かれます。

 このうち、なぜハルカが「母」になるのか……については、映画の中で丁寧に描かれています。

 しかし、サトシが「父」になる経緯については、必ずしも明瞭に描かれていません。

 これは奇異に思えます。

 ところが、その問題を追及していくうちに、以下の理由について説明できる仮説に到達しました。

  • なぜサトシはゲットしたポケモンを末永く大切にし、他人に渡さないのか
  • なぜサトシはシンジと決定的に対立しなければならないのか
  • なぜサトシは旅の同行者である少女達と一定以上の深い仲にならないのか
  • サトシが本当に必要としているものは何か

 というわけで、これは単なる思いつきなので、信じてはいけません。

 信じないのが正しい態度です。

ハルカの家庭環境 §

 先にハルカについて言及しておきます。

 ハルカは両親と弟と一緒に育ってきました。

 父親は立派なジムリーダーであり、母親は美人の誇れる女性です。

 このような満ち足りた環境で育ったハルカは、何かを強く求めねばならない精神的な必然性を持ちません。

 従って、ハルカが無意識的に規範とするのは、家庭内唯一の女性である母親となります。

 だから、マナフィを前に、ハルカはストレートに「母」になれるわけです。

サトシの家庭環境 §

 サトシは母子家庭で育ちました。

 父親が不在です。

 この点でハルカとは決定的に異なっています。

 サトシの家庭には、父親が決定的に欠落しているのです。

 もし、サトシが家庭内の欠落を補おうとするなら、自分が父親になるべく努力するしかありません。

 つまり、ハルカは家庭が円満であるがゆえに「母」になれるのに対して、サトシは家庭に欠落があるがゆえに「父」にならねばならないのです。

 そして、サトシは無意識的に自分が「父」になろうとしている……というのがこの仮説の骨子です。

「父」という役割を目指すサトシ §

 では、サトシが欠落を埋めるために「父」という家庭内の役割を担おうとしたとき、何が起こるでしょうか?

 まず、サトシの父親はポケモントレーナーであったらしいことが示唆されています。

 つまり、父親=ポケモントレーナー=旅に出るという図式が成立します。

 そして、理想の父親=理想のポケモントレーナー=ポケモンマスターという図式が成立します。

 これが、サトシがポケモンマスターを目指さねばならない決定的な必然性となります。

 ここで注意すべきことは、ポケモンマスターは目標ではなく、理想の父親になる手段だということです。

 そのため、サトシには、ポケモンマスターを目指すにあたって、理想の父親像に反する行動を取ることができないという制約がはめられます。

ポケモンを子とした疑似家庭 §

 理想の父親を目指すサトシは、必然的に自分の周囲の人間関係を家庭になぞらえて把握しようとします。

 基本的には、ポケモンは家庭内の子供の役割が割り振られます。

 サトシは父として子を鍛え、成長させ、強くしなければなりません。

 食事を作り、ポケモン達の面倒を見るタケシは母の役割が与えられます。

 ここで、サトシと旅をするヒロイン達(カスミ、ハルカ、ヒカリ)は「母」の役割を与えられていないことに注意が必要です。

 ここで特異的であるのは、ピカチュウの立場です。

 ピカチュウもポケモンであり、サトシから見れば子の役割を持ちます。

 しかし、ピカチュウは単なる子ではありません。

 実は、ピカチュウは家庭内の「主役」という立場を与えられていると考えると分かりやすいと感じます。つまり、父に鍛えられつつ強くなり勝利を目指す主な子の立場です。サトシが鍛える側に自らの立場に置く以上、鍛えられて実際に勝利を掴む「主役」は別に存在しなければならないのです。そして、第2のサトシとも言うべき似たものどうしのピカチュウは、サトシが埋めなかった「主役」の座を埋めるには適任だったということでしょう。

 こうして、サトシを父とする疑似家庭が成立します。

あるべき父の態度 §

 このようにして成立した「サトシ一家」において、サトシから見たポケモンは、バトルの道具ではなく、一人前に育て上げる義務がある子供となります。

 つまり、一度ゲットしたポケモンを自分の都合で放り出すことはできません。

 それでは父親失格です。

 だから、他のトレーナーにとって当たり前の行為であるポケモンの解放や交換ができません。

 このように考えれば、トレーナーとしての常識に従わないサトシの方が、トレーナーとしてはおかしいことになります。

 その結果として、トレーナーの常識を忠実に遵守するシンジとは、シンジが常識に忠実であればあるほど相容れません。

前置き無しにサトシが「父」として振る舞える理由 §

 このように考えれば、サトシが前置き無しに「父」として振る舞える理由は明らかです。いつでもサトシはそのように振る舞っていたに過ぎないからです。ただ、ハルカはその際の「母」ではなかった……というだけです。

 そして、マナフィという子を持って母となったハルカを前にしたとき、サトシはこの「母子家庭」の欠落を埋めるために、自分が「父」として入って行くことができたのでしょう。それは、もともと母子家庭の欠落を埋めるために「父」を指向したサトシにとって、当然の帰結として可能だったことなのでしょう。

サトシに課せられた次の課題は何か §

 疑似家庭の「サトシ一家」が最も幸福な絶頂期を迎えるのは、おそらくバトルフロンティア編のあたりでしょう。

 疑似家庭が矛盾を露呈せず、円満に維持されたのは、カスミやハルカが疑似家庭への過度の干渉を行わないタイプだったから……だと言えます。カスミはもともと深入りする気はなく、ハルカはマサトという弟との間で姉弟という家庭の一部を維持し、その枠からは出なかったからです。

 しかし、ヒカリというヒロインが出現したことで、疑似家庭にピンチが訪れています。

 サトシの間合いに入り込んでくるヒカリは、サトシが構築した理想の疑似家庭の中に当てはまる役割がありません。ヒカリは、「子」でもなければ「母」でもないのです。

 そして、サトシがヒカリの「女」を意識してしまえば、そこでヒカリこそが本当の「母」であり、二人の間にできる子供が本当の「子」であり、男であるタケシは「母」にはなり得ず、ポケモンは子供ではないことが露呈してしまいます。

 その結果としてサトシは、ポケモン達やタケシと、どのような関係で接するかを再構成する必要に迫られる可能性があり得ます。

 別の角度から見れば、シンジのやり方が間違っていない……ということを承認することを迫られたサトシは、それを承認することを通して、疑似家庭が正しいやり方とは限らないという事実を受け入れねばならなくなります。

 そして、それらはポケモンマスター=理想の父親という図式が成立しないことを意味し、サトシがポケモンマスターを目指さねばならない理由そのものが崩壊する危険をもたらします。

そして男の子は大人になる §

 この危機を乗り切ることが、すなわち男の子が大人になる……ということを意味するのでしょう、たぶん。

 そういう場面に遭遇するかどうかは分かりませんが、たとえ遭遇してもサトシならそれを乗り越えるでしょう。

 頑張れ、サトシ!

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