総論としては、表紙から予想できた通り、非常につまらない作品でした。
つまらないというのは、作品として成立していない……という意味です。
キャラも立ってないし(最後まで幽霊以外は明確な区別を見出せなかった。男の主人公でさえも!)、ストーリーも唐突な飛躍の連続です。
まあ、原作ゲームを知っていることがお約束なのだ……といえばそうなのかもしれません。しかし、コミカライズというのは、本来原作を壊して1つの筋が通った作品として組み立て直すことだと思います。それを行っていないとすれば、おそらく想定読者層がそのような「当たり前のコミカライズ」に耐えられないほど脆弱なのでしょう。
だがそれは作者の本意か? §
さて、ここからが本題。
ここで作者の脆弱性ではなく、読者の脆弱性を根拠に想定した理由があります。
それは、この作者がけっこう深いネタを連発しているからです。
- 影絵少女は少女革命ウテナ
- 恐怖漫画の顔 (うーん、なんちゃって漫画読みなので正確に語れません)
- 1秒間に11回のお姉様はデトロイト・メタル・シティ (DMC)
- 次巻予告はトップをねらえ
- その中で、命を燃やす刻が来た、はグレートマジンガーのエンディング
その他、最新刊では魁!!クロマティ高校のネタも出ているそうです。
ここで注目したいのは、これらのネタが一貫して、「今時の萌え系」に属さないことです。しかし、全てのネタが古いというわけではなく、DMCは現在進行形のネタです。絵柄が明らかに「萌え」とは縁遠いですが、新しいネタです。つまり、この作者は「萌え専門」ではないことが明確に分かります。
もう1つ、次巻予告には非常に特徴的な要素が見られます。それは、「トップをねらえ」ネタから突き抜けて、「トップをねらえ」の更に元ネタとも言うべきグレートマジンガーのエンディングまで行ってしまっている点です。つまり、作者は幅広い知識を持ち、「トップをねらえ」そのものがネタの集積体であることを正しく理解し、「ネタの集積体」というネタを効果的に「次巻予告に活用している」と見えるのです。これは、「トップをねらえ」だけを見て、単純に「感動的な泣ける話」と思い込んだ人には描けないことでしょう。
実は、上手に隠しつつも隙間から漏れ出てくるそのあたりの屈折感がこの作品の見所なのかも。
(追記)懺悔 §
グレートマジンガーのエンディングの歌詞確認のため、YouTubeでそれを見ながら科学要塞研究所が見えたとき。思わず、「あ、科学要塞公衆便所だ」と思ってしまったことを懺悔します。なに、「おなり~っ ボロッ殿だい」を知らないと? (ちなみに正しくは科学要塞公衆便「城」らしい)