2007年09月22日
川俣晶の縁側過去形 本の虫感想編 total 2330 count

空中雷撃―覇者の戦塵1943 谷甲州 中央公論新社

Written By: 川俣 晶連絡先

 読み始めると異様に面白く、途中の中断を挟んで最後まで一気に読み切りました。

 何せ、暗号通信の解析と、技術開発の話ばかりで、一発の銃弾も飛び交いません。

 しかも、暗号通信の解析は暗号の解読ではなく、解読できないのでコールサインから様々な情報を推理するだけ。技術開発も、技術開発の失敗や敵国ではなく同胞が対立する話で、面白い。

 これですよ。

 どれほど凄い兵器が、敵をなぎ倒して日本に勝利をもたらそうと、そういう小説には意味がありません。

 そうではなく、異常状況下でそれでも前向きに苦悩する人間を描いてこそ、面白い小説になります。そういう意味で、このシリーズも立て直された感じがありますね。

 うん、買って良かった。