2007年12月23日
川俣晶の縁側過去形 本の虫感想編 total 5335 count

C★N25―C★NOVELS創刊25周年アンソロジー 中央公論新社

Written By: 川俣 晶連絡先

 膨大な数の作家による記念短編集です。

 しかし、未知の作家と出会うチャンスの宝庫であるのも確かなので、少なくとも書き出しの1行ぐらいはチェックしてみようかな……と思ったので、実践してみました。

 そして、やっと終わりました。

 結果は以下の通り。

  • 過半数の作品は書き出しだけで、あるいは最初の数ページで読む気が失せた
  • 特に、ファンタジー系やライノベっぽい小説は読むに耐えないものばかり
  • しかし面白い作品は面白い。そういう作品がいくつもある。意外な未知の作家との出会いは果たせた
  • 良くできた作品と並べられると、質で劣る作品の落差が必要以上に意識されるのかも
  • ほとんどのケースで、書き出しの1文ないし1段落程度で、善し悪しが分かってしまう (良い例「驚きましたよ。うちのエリザベスは高級キャットフードしか食べないはずなんですから」→そんな猫がいったい何を食べた?と思って引き込まれる。悪い例「若者は生と死の端境にいた。(改行)わずか一六年の生で終わるかは、生まれた時に授かる運の量と、これまで稽古してきた汗の量で決まる」→誰だか知らない若者が死のうと関係ないな。先を読みたい気持ちがそそられない。それに、運と汗だけで決まるという決めつけは白けちゃうな)
  • しかし、ファンタジー系はダメとも言えない。最後の「がんばれ、ブライスくん! デルフィニア戦記外伝」は、全く知らない架空世界の話で、全く知らない人達の関係者の話で、しかも厳密には終わっていないにも関わらず、非常に面白かった。いや本当に、デルフィニア戦記を読んでみようかと思ったほど
  • やはり作家本人の力量さえあれば、題材とは無関係に面白い

 というわけで。

 最終的に残ったのは、実は「自分の書くものの書き出しは、上手く書けているだろうか」という問題意識でした。

 これだけ露骨に善し悪しが並んでしまうと……ね。

 もし悪い側に自分の書いたものが並ぶなら、それはゆゆしき事態です。

2007/12/26追記 §

 上の感想だと、良かった作品と読み通せなかった作品の区別が明確ではなく、良かった作品が悪かったと誤解されるリスクがあると気付いたので、良かった作品、読み通せた作品の一覧と簡単な感想を書くことにしました。

 以下の通りです。

巻頭企画C・NOVELSの25年 §

 C・NOVELSの初期の重要な作品が「要塞シリーズ」だったとは。

 ニセコ要塞は面白い小説を見つけたと思って読んだことを思い出します。(要塞シリーズは途中で脱落して読まなくなりましたが)

 ということは、C・NOVELSの初期からずっと付き合って読んでいることになりますね。

花嫁(荒巻義雄) §

 むむ。なんだろう……と思いながら読了。不思議な感じで引き込まれました。

最期の街(誉田哲也) §

 現実と幻想の狭間を突き抜けて旅をする感じで、最後まで面白く読めました。

予告探偵 カタコンベの謎(太田忠司) §

 けっこう面白かったので読み切りました。

 トリックが軽いのはページ数の関係からやむを得ないかな。

猫たちの戦野―皇国の守護者外伝(佐藤大輔) §

 うん、素晴らしい!

 主人公の少年にとっては不幸な話ですが、まさにあるべき素晴らしい作品です。

高射噴進砲隊(谷甲州) §

 覇者の戦塵の本編に組み込まれていても違和感がない内容ですね。

ナイン・ライブス―スカイ・クロラ番外編(森博嗣) §

 なるほど!

 そうか!

 スカイ・クロラってそういう内容だったのね!

我等が猫たちの最良の年(三木原慧一) §

 ぬけぬけと作家が飼い猫の視点から自分を描く小説。最後まで読み切りました。

神隠しの谷の惨劇―サイレントコア番外編(大石英司)) §

 出だしのつかみの上手さに舌を巻きました。

夜半を過ぎても―煌夜祭前夜(多崎礼) §

 ファンタジーですが、なかなか面白く読めました。

スペイニタリア珍道中(鈴木理華) §

 文化のギャップを楽しむ海外旅行コミックス。

彼女のユニコーン、彼女の猫―西の善き魔女番外篇(萩原規子) §

 書き出しの1文は良かったのですが、肌に合わずパス。

ノッブスの十戒―PARTNER EX(柏枝真郷) §

 いやこれはなかなか面白いです。日常的な迷惑行為から事件に至る流れが見事。

がんばれ、ブライスくん―デルフィニア戦記外伝(茅田砂胡)) §

 面白いです。作品として終わっていないのに面白いと思いました。

 これなら、デルフィニア戦記読んでみようかという気になります。