2008年01月31日
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井の頭線明大前駅に2面4線のホームを造ることができる余地はあるか? やっと分かった現実の可能性

Written By: 川俣 晶連絡先

 井の頭線のルーツは、東京山手急行電鉄といい本来は山手線の外側に第2の環状線をつくることを目的とした鉄道会社でした (かなり曖昧でいい加減な説明)。そして、その「第2山手線」は明大前駅で現在の井の頭線と接続する予定でした。

 そのようなわけで、井の頭線明大前駅は2つの路線の乗換駅として2面4線のホームを作ることができるように用意されたと言います。実際は、2面2線の対向式ホームですが、法面を削れば2面4線になると言います。

 また、その証拠として、明大前駅の北にある玉川上水の下をくぐる橋は明確に4線分のスペースが用意されていることがあげられます。明大前駅南側でも、4線分の空間を確認できます。

疑問 §

 ……というのが定説なのですが、個人的に「本当にこのスペースに2面4線が入るのかよ」と首をかしげていました。

 ともかく実際にホームに立って眺めた感想としては、とても狭いのです。

謎は解けた §

 実は何気なく本棚にあった「鉄道未成線を歩く (私鉄編) JTBキャンブックス 森口誠之著」を開いて、眺めていたときにハッとする図面を見てしまったのです。

 p63 松原停車場(現・明大前駅)設計平面図です。

 これを見て、謎は全て解けました。

 確かに、2面4線が入りそうです。

何がミスリードを誘ったのか? §

 一言で言えば、今の常識で過去を見たという典型的な過ちです。

 具体的に言えば、以下の点が図面から読み取れました。

  • 駅本屋はホームの北端西側にある (今は京王線込みで南端に近い位置にある)
  • 駅本屋から線路をまたぐ形で東西の跨線橋があり、そこからホームに降りるようになっている
  • 現在はホーム南端で京王線のホームと接続しているが、そのような接続はない。京王線の線路とは少し距離を置いてホームが始まっている
  • そもそもホームの長さがずっと短い (せいぜい2両程度)

 要約すると、以下の2点に絞られます。

  • 京王線との接続通路も階段も存在しないので、ホームをやや北寄りに置くことができ、比較的掘割の幅の広い部分を活用できる
  • ホームの長さが短いので、比較的幅の広い範囲内で駅が完結する

 つまり、「こんな狭さで2面4線は無理だろう」と思った部分は、本来の計画ではホームを造る予定の場所ではなかったわけです。そこは、列車の編成長が伸びたことで延長した部分であって、延長時には2面4線にする計画は既に存在していなかったのです。

余談・2面4線が準備されながら不可能になった駅 §

 ちなみに京王線のめじろ台駅も似たような経緯を辿っています。この駅は、本来2面4線の駅として建設されながら、ホームの延長によって待避線を潰し、2面2線の対向式の駅になってしまいました。しかも、掘割にある駅という点まで、井の頭線明大前駅と似ています。

この先の展開 §

 当時の駅本屋の位置はどこか、ある程度調べる余地があるかもしれません。いくつかの道が描き込まれているので、それと対比すること地図上で当たりをつけることができるかもしれません。とはいえ、様々な位置関係が今と違っているので、どこまで分かるかは何とも言えません。

ジョーク §

 もしかしたら駅本屋の位置は、現在啓文堂書店という本屋がある場所あたりかもしれません。

 ……と書くと、鉄道用語の「本屋」と一般用語の「本屋」の意味が混乱して読む人を惑わせてしまうかも?

 (しかし、ざっと地図を見る限り、啓文堂書店のある場所が駅本屋の位置だった……という可能性は十分にあり得そうです)

 2008/01/31追記 「本屋」という用語についての補足を「井の頭線明大前駅の話題の補足・「本屋」は建築用語か鉄道用語か?」に書きました。

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