2008年02月07日
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4巻・31~32時間目扉絵・ビジュアル表現スタイルの質的転換点はここにあるか?

Written By: 川俣 晶連絡先

 ネギま!の1巻を最初に読んだときは、とても感動して喜んだものです。いや本当に。これは凄く作品だと思いました。熱くて濃い作品だと思いました。

 しかし、最近1巻から読み直したとき、あまりに1巻がぬるくて薄いことに愕然としました。

 では、この印象のギャップはどこから来たのか……と考えると、以下のような結論に達しました。

  • 作品が持つスタイルが1巻と20巻前後では歴然として違う
  • 特に、ビジュアル表現スタイルが違う

 とすれば次は以下のような疑問が出てきます。

  • スタイルはどこで変わったのか?

 読み直しが4巻・31時間目まで到達した時点で、「ここだ!」と感じたのでメモっておきます。

変革の準備期間としての3巻 §

 3巻の各章の扉絵は、何か凄いものを目指そうとしているが、それが少し空回りしてバランスを欠いているような印象を受けます。

 理想の高さと、それに到達できていないもどかしさ、といった感じでしょうか。

 全般的に、エヴァンジェリンとの対決のあたりで、何か変革の意志のようなものが見えてきた感があります。

質が転換する修学旅行編 §

 はっきりとビジュアルの持ち味が変わってきたと思えるのは、修学旅行編に入って以降です。密度の高い京都や旅館の描写の中で、絵的な質が高まったような印象を受けます。その印象が決定的になるのが、4巻・31~32時間目扉絵です。(注: 1枚の絵が31時間目と32時間目の扉絵となる)

 旅館の一室で布団の上の6人の少女がポーズを取っているという構図ですが、全体が左右非対称の山型のシルエットを構成しています。髪の色の黒やグレーの配色の位置も全体のバランスの中で非常に印象的にセッティングされています。平面の構成としても、立体的な構造としても、色のバランスとして見ても、文字の入る位置とのバランス関係を見ても、どこを取っても非常に安定的かつ印象的な秀逸な1枚です。

 ストーリー的にも、その直前にネギの男の子自身を握る刹那や、下着を盗むの猿達などインパクトの大きな描写が続いており、安定したバランス感さえあれば何でも大胆に描けるという自信が表出しているタイミングであるかのようにも見えます。

 ちなみに、下着を盗むの猿達はエッチだから大胆なのではなく、服を奪おうとする猿とそれを妨げようとする女の子側の全身の動きが噛み合っていないと不自然に見えるという意味で、非常に難しい凝った構図をあえて描いている点が大胆だと思うわけです。

学園を出るという契機 §

 なぜこのタイミングで……という疑問は、もしかしたら「学園を出て、非日常の異世界に行く」という出来事が重要な意味を持つのかもしれません。エヴァンジェリンに関わることは、学園内の出来事であるにもかかわらず実質的に異世界に関わることです。しかも、ヨーロッパの貴族的世界です。そして、修学旅行で行く京都はもちろん「京の都」という時間を超越した異世界です。そういった世界を描こうとすると、どうしても「学園もの」レベルのビジュアルや内容では「背景に負ける」という状況が起こってしまいます。通常、そのようなケースでは背景の方を弱めていくのが一般的であるような気がしますが、ネギま!は作品本体を強化することでバランスを取ろうとした……という感じでしょうか。

未完 §

 というわけで、このような考え方が本当に正しいか考えながら、続きを読んでいくことにしましょう。

2008/02/08追記 §

 34時間目の扉絵もビシッと決まっていますね。28時間目の扉絵が、単調でかつ背景の白さも目立ち、人物のポーズも曖昧なのと比較して、歴然として変化が見えます。

 29時間目の扉絵は、1枚の絵としてはやや雑然とし過ぎの感はありますが、個々のキャラクターが見えてくればビシッと筋の通った良い絵です。全体が1つの「形」を作り出しています。

 やはり3巻はターニングポイントなのかも。

2008/02/08更に追記 §

 4巻・31~32時間目扉絵のような旅館集合写真風の絵は、5巻38時間目の扉絵で極めて高い完成度を見せて再度出現しています。この扉絵は、全体が三角形のシルエットを持つと同時に、あえて左に傾いた構図を取って単調さを回避しています。それと同時に、右上に何もない空間(背景の布団だけ)という「遊び」を持つというセンスの良さも見せています。また、三角形の右のラインの延長線上かつ右下のエッジという位置にロゴを配置して、全体が左上から右下への1本のラインとして構成されています。

 そして、これだけ綺麗な形を作りながら、描かれたキャラクターの個性や心情が丁寧に描き込まれていて、キャラ絵としても非常に優れています。

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